呆れるくらいに君が恋しい。
『か、薫?寝てる?』
こんなとこまで来たのかよ。
探しに?
ほんと優しいな。
あれだけ泣きそうな顔をしてたのに。
きっと、少し傷つけてしまったのに。
近づいた君の顔と手に少し驚く。
「なに。」
起き上がると慌てた表情の君と目が合う。
「え、え、何でもな…」
俺から逃げようとして、
足元の本に気づかずに転びそうになった君。
「わあ…!」
あぶねっ!
倒れる寸前、腕を引っ張って
自分の方に引き寄せる。
軽い身体は呆気なく俺にぶつかる。
「何で逃げんの。」
ねぇ。
右手で掴んだ君の腕。
そのまま君を抱き寄せて、
「俺に何しようとしてたかなんて、
知らないけど。」
開いていた方の左手は
君の腰にそっと添える。
「イタズラしようとしてたなら、」
見上げる君の表情はちょっと怯えてて。
でも、今更やめることはできない。
俺から逃げるなんて
「覚悟は出来てるよね?」
冷たく笑う。
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