呆れるくらいに君が恋しい。
立川 菜瑠side
花火大会当日。
何だかんだ支度に手間取って
5分ほど遅れてしまった。
待ち合わせ場所に行くと
時計を見ながら立っている颯の姿。
思わず見惚れて、
はっと我にかえる。
でもさ、でもさ、
色んな女の子が颯のこと見ていて、
「かっこいい。あの人。」
「1人かな?」
「いや、明らかに誰か待ってるでしょ。」
「彼女、かなぁ…」
「うん、彼女いるに決まってるよね…」
「「イケメンだもん。」」
そんな声が近くから聞こえる。
こんななか、颯を呼ぶのは少しだけ
勇気がいるな…。
そう思ってると、
「菜瑠。」
足が止まってた私の元に
近づいてくる颯。
その瞬間だけ周りの音が消えた気がした。
近づいた颯からはなんかいい匂いがして、
その香りと共に伸びた手が
私の髪をさらっと撫でて
「可愛い、髪。」
首もとを緩くなぞる。
う、わ。
いつも以上にドキドキするのは
きっと、颯が浴衣だから。
「ちゃんと浴衣着てきたんだ?」
誉められたのは髪型。
誉められたのは髪型。
誉められたのは髪型。
そう自分に言い聞かせて
顔が赤くなるのを必死で抑える。
「なーる?」
俯いた私の顔を不思議そうに覗きこむ颯から
そっと距離をとって
「屋台!屋台見に行こ!」
そう声をかけた。