クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「ハルトマンは三年前に父が取り立てた男です。父が信頼していたし、働きぶりも真面目でしたので、誰も彼を疑うことは有りませんでした。ですが父はヒルト家当主。その人を見る目の無さは代官として問題があります」

ヘルミーネ様は暗い表情をする。

「そんな事は……ハルトマンは聖職者だし、騙されても無理はないわ」

「いいえ。父は鉱山の採掘量が減っても、諍いが多発してもただおろおろするだけでした。父がラウラ様にアンテスの鉱山を見せて欲しいとお願いした事覚えていますか?」

「ええ」

気弱な男爵が妙にしつこかったので印象に残っている。

「アンテスの鉱山は最近順調だと聞いて、真似をすればリードルフの鉱山の採掘量も復活すると本気で思っていたようです。その前に対応する案件は沢山あったというのに」

確かにヒルト男爵はこのリードルフの代官として相応しくないのかもしれない。

人柄が良くても能力が向いていない。
だからといって代われる人材もいないのだけれど。そんな事を考えていると、居住まいを正しよく通る声で言った。

「これ以上、父には任せられません。リードルフの代官の地位は私が継ぎます」

「え?」

「やはり驚かれますか?」

ヘルミーネ様がふっと笑う。

「ええ……だって女性の代官なんて聞いたことがないわ」

「そうですね。私が第一号です」

彼女は堂々と宣言し、少しも躊躇う様素がない。自信に溢れている。

望みが叶うと疑っていないのだろう。

「……凄いわ」

彼女には不快な思いもさせられたけれど、その強さは純粋に凄いと思う。
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