クールな公爵様のゆゆしき恋情2

「確かに皆疲れている様に見えますが、将来の独立に向けて必要な試練なのです。少し休めば元気なりますので、公爵夫人もあまりご心配なさらずに」

「広場の子供達は採掘場の仕事帰りなんですね。子供達と直接話してもいいですか?」

「申し訳御座いませんが、それはご容赦を。当院の子供達は公爵夫人の御前に立つだけの作法を心得ておりません」

「まだ小さな子供達に堅苦しい作法など求めませんわ。気軽に話しが出来ればいいのです」

出来るだけ気さくに見える様に笑顔で言ったけれど、院長は頑なだった。

「申し訳御座いません。無理強いすれば、子供達に過度の緊張を強いることになります」

「……そうですか。仕方ありませんね」

子供達の様子が、とても少しの疲れには見えないから気になるのだけれど、院長の言う通り、彼等が私と会う事を負担に思うのなら無理強いは出来ない。

それに、独り立ちする為に必要なことなのだとしたら、余計なことを言って邪魔をするのは良くないし。

だけど、希望の欠片もないような暗い表情をする子供達のことが気になって仕方ない。

「御希望に沿えず申し訳御座いません」

落胆が顔に出てしまった様で、院長が再び頭を下げてくる。

「いいえ……子供達に贈り物を用意して来ました。院長に託しますので皆に渡してください」

私は護衛騎士に目配せをする。
数人が、運んできた荷を取りに馬車に向かうのが見えた。

「お心遣い、誠に感謝致します。子供達も喜ぶでしょう」

「そうだといいのだけど」

「では公爵夫人、院内をご案内させて頂きます。どうぞこちらへ」

「ええ……」

相変わらず覇気のない子供達の様子に後ろ髪を引かれる思いで、院長の後に続き孤児院の扉をくぐった。
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