クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「奥方様! 馬車にお戻りください」

突然飛び出して来た私に気付いた護衛騎士達が、慌てたような声を上げ近付いて来る。

今が危険な状況とは思えないけれど、万が一を考え私には馬車から出ないで欲しい様子だ。

「少し待って、あのふたりと話をしたいの」

私は護衛騎士の向こう側。この騒動の原因たるふたりに目を向ける。

「ですが……」

騎士は浮かない表情で口ごもる。

多分、アレクセイ様から私を絶対に危険な目に合わせないように……とか厳命されているのだろう。

そう察したけれど、私はいつになく強引に護衛騎士を振り切り、前に進んだ。

他の騎士達に囲まれ地面に座りこんでいるふたりは、まだ小さな少年と少女だ。

こんな小さな子供が、危険を冒してまで護衛を連れた馬車を止めた理由が気になる。

近寄っていくと、年上の少年の方が私の存在に気付いたようだ。立ち上がり駆けよって来ようとする。

直ぐに騎士達に取り押さえられてしまい、叶わなかったけれど。


「離せよ! 俺は公爵夫人に話があるんだよ!」

少年は声変わりをしていない高い声をあげ、自分を拘束する騎士の腕を振り切ろうと、バタバタと暴れる。

でも、 屈強な騎士の拘束が解けるはずも無く、それどころか更に強く抑えられてしまう。

「お兄ちゃん!」

その様子に、一緒にいた妹と思われる女の子が、不安そうに涙を滲ませた。

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