クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「公爵夫人が大胆な行動をするなんて想像出来ませんね」

「今は立場を弁えているつもりです」

結婚して以来、フェルザー公爵夫人として相応しい行動をすることを第一に考えていた。

衣装も、仕草も、言動も……すべて周りの目を意識していた。

だけど、立場は変わっても私自身は大して変わらない。
最近の私は、公爵夫人としてしっかりしなくてはと思うあまり、少し自分らしさを失ってしまっていたのかもしれない。


会合を見守っていると、一応の結論を出したのか、終了の号令がかかった。

代表者の女性が立ち上がり、皆に言う。

「短い時間になりますが、公爵夫人が皆の要望を聞いて下さります。発言したいものは挙手をお願いします」

場はしんと静まりかえる。

こういう場は何度か経験しているけれど、遠慮する者が多く、意外と要望は出てこないものだった。

だけど、リードフルはやはり一味違っていて、女性達は数秒後にはわれ先にと手を上げ始める。

その活力に溢れる光景に、圧倒されていると、代表者の女性は苦笑いしながら、発言順を決めていき、それが終ると私に目を向けて言った。

「公爵夫人、大変お手間をおかけしますが、よろしくお願い致します」


【夫の酒場の出入りは週三日まで】
【鉱山で働き、家事も担う女性には特別手当を】

など、ちょっと実現が難しいことなども入り混ぜ、女性達は貪欲に意見を言って来た。

圧倒されながらも、私は全て記憶し、皆にはしっかり検討するといい、席を立った。

代表者の女性に送られ、建物の外に停めてある馬車に向かう。

途中、女性は申し訳無さそうな顔で頭を下げた。

「公爵夫人、申し訳有りません、皆、調子に乗って勝手なことばかり言い出してしまいまして、下らないことまで言うも者もいました」

「いいえ、忌憚ない意見を聞けて私も楽しかったです」

それは建前でなく本心からの言葉だ。

貴族の姫扱いをされて腫れ物を扱うように接して繰るより、本音をぶつけて貰ったほうが気分がいい。

「そう言って頂けて安心致しました」

「今日聞いた意見について全て要求通りに出来ると約束は出来ませんが、そういった事に詳しい者の意見も聞きながら検討しますね」

「はい。ありがとうございます」

感激した様子で頭を下げる女性と別れ、私は馬車に乗り込みリンブルグ孤児院へと向かう。

来た時より、気分が楽になっっていた。
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