クールな公爵様のゆゆしき恋情2
私の乗る馬車がリンブルグ孤児院に到着すると直ぐに、玄関の扉が開きハルトマン院長が飛び出して来た。

「公爵夫人、本日はいかがなさいましたでしょうか?」

院長は少し慌てているように見える。
昨日と違って予定外の訪問だからだと思うけど、そこまで焦ることはないのに。

「子供達の様子が気になり本日も来ました。今後もリードルフ滞在中は頻繁に様子を見に来ようと思っています」

「頻繁に……」

私の言葉に、院長は呆然とする。

余程私が来ることに抵抗があるようだ。

それは院長だけでなくいつの間にかやって来た、彼の部下たちも同じようで、不満そうな表情で私を見ている。

あからさまに歓迎されていない。

だけど、それに気付かないふりをして私はニコリと笑って言った。

「皆さんは忙しいでしょう? 私のことは気にしなくていいわ。今後は出迎えは不要です」

院長の顔はますます青ざめ、やがて怒りの篭った目を私に向けて来た。

「公爵夫人の気になっていることとはどのようなことでしょうか? 我々はこの孤児院の運営に関して精一杯努めておりますが、公爵夫人のお気に召さない点があるようでしたら改善いたします」

だから早くここから立去れ。そんな声が聞こえて来そうなほど、院長は苛立っている。

ルカの言っていた子供達の行き過ぎた労働に関して、私に知られたくないからだろうか。

「ハルトマン院長、私は子供達と話してみたいのです。子供達は今どこに?」

院長の背後に控える部下達の肩が、ビクリと揺れたのが見えた。

院長は目に見えた反応は見せなかったけれど、一段低い声を出す。

「この時間は、採掘場で仕事をしております」

「幼い子たちは? 昨日の話では採掘場に行かないとのことだったけれど」

「……現在採掘場が例を見ない忙しさとなっております。その為特別対応として当孤児院の子供達を手伝いに行かせております」

ルカの心配していた通りだ。
病弱な幼い子にも容赦ない、なんて酷いんだろう。

込み上げる苛立ちを隠し、私は院長に微して告げた。

「では、その採掘場を訪ねてみるわ」

「えっ、そ、それは……」

院長の部下がひきつった声を上げる。

「何か、問題が?」

ルカの話を聞いていなくても、彼らの様子を見れば、都合が悪い事が有るのだと気付く。

それでも私が、採掘場に行く事を許可しないとは言えないはず。
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