クールな公爵様のゆゆしき恋情2
私の問いかけに、今度は皆黙り込んでしまう。

「遠慮しないで、困っていることがあるならこの機会に言ってみて?」

出来るだけ優しい声で再度促すと、ルカが一歩前に進み出て声を上げた。

「仕事がきつ過ぎる。俺達はまだいいけど、もっと小さな子供には無理だと思います。このまま続けていれば誰かが倒れてしまう」

ルカはさすがに賢く、私とは初対面といった態度をとってくれる。

安心していると、ルカの発言に勇気付けられたのか、他の少年が震える声で発言した。

「ルカの言う通り、仕事内容が段々ときつくなっていって、子供によっては身体を壊してしまう子も出て来ています。今日は公爵夫人が来てくれたから休憩時間があるけど、忙しいときは無い時もあるんです」

「休憩が無い時があるの? それはよくあることなの?」

アンナの予想通りの事実に私は眉をひそめる。

すると、先ほどのしっかりした態度の少女が口を開いた。

「最近ではよくあることです。なぜか発掘のペースをどんどん上げていて運搬係も休んでいる暇がないんです。だけど、リンブルグを卒業した先輩達は休憩も取れないほど忙しいことなんてなかったって言ってます。明らかにおかしいんです」

少女の訴えをきっかけに、他の子供達も次々に不満を上げていく。

余程抑圧されていたのか、彼等の不満はかなり大きいようだ。

私は一通りは無しを聞き終えると、皆を見渡して言った。

「みんなありがとう。とても良く無い状況だということが分りました」

それから最後に、一番しっかりしていた少女に目を向ける。

「あなたが先ほど言っていた先輩の話を私も聞いてみたいわ。連絡を取れる?」

今の子供達の労働環境がおかしいことは確かだけれど、改善をするべく院長達と話し合う為には過去の状況も知っておきたい。

連絡先が分れば、護衛の誰かに住所を調べて貰って直接尋ねてもいい。

そう考えたのだけれど、少女はすっと腕を上げるとひとつの方向を指差した。

「あの人です。名前はイザーク。この採掘場の警備をしている人」

少女の示す方向に目を向ける。

そこには赤い髪に上下黒の簡素な服、腰には大降りの件を携えた青年が佇んでいて、私達のことをじっと眺めていた。
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