クールな公爵様のゆゆしき恋情2
近付く私に気付いたのか、イザークもこちらに歩み寄って来る。

するとイザークを警戒しているのか、フェルザー家の護衛騎士達が私の周りに集まった。

「奥方様に何の用だ!」

護衛騎士の隊長がイザークに問い質す。

「そちらの方が俺に話がありそうだったので」
「なんだと!」

イザークの飄々とした返しに、隊長は気を悪くしたようだ。このままだと揉めそうなので早々に割り込んだ。

「彼の言う通り、私から聞きたいことがあるの。少しだけ時間を頂戴」

隊長は身体を前に向けたまま、一瞬だけ私を振り返る。

「ですがあの男は危険です」

「どうして? 凶暴な相手には見えないけど」

「それは……」

隊長が何か言いかけた時、イザークの大きな声がそれを遮った。

「このままじゃ埒が明かないので、俺の剣を預けますよ。それなら問題ないでしょ?」

見ればイザークは腰に帯びていた剣を鞘ごと掴み、隊長に差し出している。

「……それでもふたりきりでは駄目だ。私が同席する」

「俺は別に構わないけど」

イザークはあさりと言い、私に目を向ける。

「私もそれでいいわ。でも最後まで話はさせてね」

不満そうな隊長と、アンナを連れて、私はイザークと対峙した。

と言ってもイザークに緊張感は全くない。

私の立場は分かっているはずなのに、この態度は余程肝が据わっているのか、それとも身分制度というものに無頓着なのか。
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