クールな公爵様のゆゆしき恋情2
「ラウラ奥様、大丈夫ですか?」

私とヘルミーネ様の対決を部屋の片隅で見守っていたアンナが、心配そうに近付いて来た。

「大丈夫、でも実は凄く緊張したわ。顔に出てないといいけれど」

「出ていませんでしたよ。いつもと違ってフェルザー家の女主人の貫禄が出て格好良かったです」

いつもと違ってというのは余計だけれど、とりあえずは平然として見えたということのようでほっとしながら、私は再びソファーに座りこむ。

「出かけないのですか? 予定の時間は過ぎてますけど」

不思議そうなアンナに、私は頷いてみせる。

「アレクセイ様が来ると思うから」

「公爵閣下が?」

「ええ。ヘルミーネ様が今のやり取りを言いつけに行ったと思うわ」

「ああ……そうですね。今頃ラウラ奥様、かなり酷く言われているんでしょうね」

ヘルミーネ様がアレクセイ様に涙ながらに訴える姿を想像して、気分が重くなる。

「お茶でも入れましょうか?」

「いいわ。アレクセイ様との話が終ったら直ぐ出る予定だから。アンナも支度をしておいてね」

「はい」

アンナと会話をしていると、予想通りせわしない足音が聞こえて来て、部屋の扉がノックも無しに開いた。

「ラウラ」

険しい顔のアレクセイ様が部屋に入って来る。

やはりヘルミーネ様にあれこれ言われた様子だ。

「アンナ、先に行っていて」

「はい、分りました」

アンナは機嫌が悪そうなアレクセイ様に恐れをなしたのか、私の言葉を幸いとばかりに、そそくさと部屋を出て行く。

ふたりきりになると、アレクセイ様は私の座るソファーの隣に当たり前のように座って来た。

「ラウラ、ヘルミーネと何が有ったんだ? 無理矢理リンブルグに連れて行かれると取り乱していたが」

「ヘルミーネ様がリンブルグの現状を軽く考えているので実際自らの目で見ても貰おうと考えたのです。これから彼女を連れて行ってきます」

はっきり言い切ると、アレクセイ様はほんの少し動揺したように身体を引いた。

「だが……随分急だな。ヘルミーネはこれから鉱山に行く用が有って……」

「アレクセイ様のお供で?」

アレクセイ様の言葉を遮り冷たく言う。

「ラウラ?」

唖然とした様子のアレクセイ様に、私は淡々と続ける。

「この際はっきり言います。アレクセイ様の用件にヘルミーネ様の同行は本当に必要なのですか? リードルフに来てもう何日も経ちます。まだ案内が必要なのですか? 私は疑問で仕方ありません」

「……ヘルミーネは鉱山の実力者達に顔が利くから居ると役に立つんだ」

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