強引ドクターの蜜恋処方箋
「そう。それそれ」

「え~、本当にぃ?よく知らないけど、資格取るの難しそう」

「勤め先の3つ向こうの駅に、ちょうど資格専門の学校があってね。なんとなく調べてたらインテリアコーディネーターの講座があって、吸い込まれるように学校に入学しちゃったの」

「なんかご縁って感じだね」

「そうなんだ。だから今すっごく充実してる。インテリア関係の仕事につけるかどうかはまだわからないけど、自分の可能性が広がったっていうか。これからまだまだ現役でやれる自信みたいなのが沸いてきたわ」

「マリは昔からそういうとこ変わらないね。すごいよ」

私は、マリがまぶしく見えた。

学生時代から、好奇心旺盛で気になったことはとことん追究してたし、その中へ飛び込む勇気のある娘だった。

イギリスの短期留学も一緒に行こうと誘われたものの、そこに踏み出す勇気のなかった私は断り、彼女は海を渡った。

たった三ヶ月の留学だったけど、マリは英語を習得し金髪の彼氏まで作って帰ってきた。

生き生きとイギリス生活の話をしてくれたマリを見ながら、一緒に行かなかった自分を少し後悔した。

私はいつも一歩出遅れる。

そして後悔するんだ。

判断に迷い、迷ってる間に時は流れる。

今の自分だってそうだ。

何やってんだろって。

「でも、例えインテリアの仕事見つかったとしても、今までやってきた保育士のキャリアもったいなくない?」

「まぁね。子どもは好きだし、別に今の仕事に不満があるわけじゃないけど」

私はさらにパンケーキを切って、口に運んだ。

「人生一度きりじゃない?色々可能性にチャレンジしたいんだ。もっともっと楽しくなる世界が待ってるんなら飛び込んだってよくない?」

マリは、目の前のパンケーキの存在なんて忘れてしまったかのように、目を大きく見開いて私を見返した。
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