強引ドクターの蜜恋処方箋
「そういえば、チナツ、看護師さんに憧れてる時なかった?」

マリ、覚えてたんだ。

「そうだったっけ」

少し面倒くさくなって、適当に返事した。

「看護師さんなんて、すっごく素敵な仕事じゃない。人のために何かできるって仕事はそうでないと思うよ。今から看護学校通うっていう選択肢は、チナツにはないの?」

「看護学校?それはないわ。今更勉強する余裕なんて全くないし」

「それは、チナツのやる気の問題よ。どうなの?今の仕事と比べて、看護師にはもう魅力感じない?」

過去に封印した気持ちが少しの隙間から漏れてくるのを感じた。

「看護師ていう仕事は、今も素敵な仕事だと思う。誰かのためになってる実感って、今の仕事ではあんましないしね。採用の仕事って、皆採用できればいいけど、誰かを採用したら誰かを落とさないといけないから、どうなんだろね。辛いときもあるわ」

「チナツの場合、看護師になろうと思ったら、私以上にがらりと生活変わるもんね。そんな簡単に決断できるもんでもないか」

「そこまで話盛り上げといて、簡単に投げないでよ」

思わずマリのおでこを人差し指で突きながら吹き出した。

マリは慌てて、

「ごめんごめん。だって、チナツの人生かかってることにあんまり私が口出すのも責任重大だしさ。思わずひいちゃった。」

そう言った、マリの目は私を試しているかのようにいたずらっぽく微笑んだ。

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