強引ドクターの蜜恋処方箋
エレベーターで10階まで上がる。

「じゃまたお昼休みにねー!」

ユカとは同じ階だけど、私の職場とエレベーターを挟んで反対側のフロアだからここでしばしのお別れだ。

何も悩みがないみたいに元気よく走っていくユカの後ろ姿を見ながら、思わずこっそり笑った。

席に座るといつものようにパソコンを開いてメールチェックをする。

10件ほどのメールがザッと赤く染まった。

差し出し名に彼の名前を見つける。

『田村 颯人』。

彼はユカと同じ営業部のホープだ。

仕事だけでなく顔もスタイルもイケてる、いわゆるイケメン。

ユカいわく、田村さんに泣かされた女子がいっぱいいるらしい。

どういう泣かされ方してるのかは不明だけど。

そんな田村さんとは行き始めたジムで初めて出会った。

まだジムのマシーンに慣れずもたもたしている私を見かねて、マシーンの使い方を丁寧に教えてくれたのが田村さんだった。

その時、色々話をしていたら同じ会社だっていうことが発覚したってわけで。

それからジムで顔を合わせる度に優しく話し掛けてくれるようになった田村さんとは、いつのまにか親しくなっていった。

イケメンに優しくされたら、そりゃ誰だって気分はいい。

でも、まぁユカからの情報ではかなりの遊び人っぽいし、到底私なんか相手にされないだろうって分かってるから、それ以上踏み込もうなんて思ってもないんだけど。

30前にもなると色んなことに慎重になるわけで。

そんなことを思いながら、『田村 颯人』のメールをクリックした。


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