強引ドクターの蜜恋処方箋
クッキーをつまみながら、紅茶を飲む。

そして、母とたわいもない会話をして笑う。

心からゆったりと安心しきった時間。

そんないい時間を満喫してるってのに、突然母は切り出した。

「チナツ、最近どうなの?いい人はできた?」

いい人か。

一番近しいっちゃ田村さん?だけど、これからどうこうなる関係ではないし。

「ん?まぁいい感じの人はいるけどね」

面倒臭くなって母の方は見ずに答えた。

「そうなの。その人とは結婚まで考えてるの?」

「そこまでは考えてないし」

っていうか、まだそこまでの付き合いの男性なんて1人もいないわけで。

母は私の相手がいないことに心配しすぎなところがあるから、いつものように適当にはぐらかす。

「だって、あなたももう28でしょう?ぼーっとしてたら、あっという間に時間なんて過ぎてっちゃうわよ。お母さんがまだ元気なうちにあなたの花嫁姿見させてよ」

「何いってんの。急いては事をし損じるっていうじゃない。もう少しゆっくり関係を育ませてよ」

「関係を育める相手ならいいけど。無駄な時間を過ごす相手だったらさっさと別れて次行きなさいよ」

母は、今日はえらくずけずけと言ってくれる。

心にぐさぐさ突き刺さるわ。

「今日はさ、ちょっと折り入って話があったから、チナツを呼んだっていうのもあるのよ」

母は急に改まった口調になった。

小さく咳払いして、紅茶を一口飲む母がとても緊張しているように見えた。

な、なに??

そんな雰囲気にされちゃ、こっちの方が緊張してくるよ。

「何?話って?」

妙に緊迫した空気にドキドキしてきた。


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