強引ドクターの蜜恋処方箋
母はそんな私の心配そうな顔を見てカラカラと笑った。

「なんて顔してんの。どういう想像してる?」

「え、だってさ。そんなあらたまってわざわざ話があるだなんて、緊張するじゃない」

「チナツよりもお母さんの方が緊張してるってのに。もっとフランクな顔して聞いてよ」

「え?何よ?」

「実はね、お母さん、結婚しようと思ってるの」

「・・・へ?!」

次の言葉が出てこない。

あまりにも意表をついた告白だっただけに。

母が結婚?!

想像できないよ。

しかも娘より早く結婚だなんて、順番おかしくない?!

「驚いた?」

母は上目遣いで、少女のような顔をしていた。

きっと母もすごく緊張してる。

「驚くも何も。今までそんなそぶりすら見せたことなかったのに。そんないい人いたんだ」

「ん。結構前からね」

「そうだったの!なぁんだ。娘にはきちんと逐一報告してくれなくっちゃぁ」

動揺しつつも、母の嬉しそうな顔を見ていたらこちらまで嬉しくなってきた。

「だから、ほら、あなたも早くいい人と結婚しなさいよ」

照れ隠しなのか、母は恥ずかしそうな顔をして、私の腕をこづいた。

「で、お相手はどんな人なの?」

興味津々だ。

母のお相手って。一体どこで知り合ったんだろ。

父と離婚してずっと私と二人で生きてきた気丈な母が心を許せる相手ってどんな人?
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