強引ドクターの蜜恋処方箋
第一関門、ひとまず突破。
母も水谷先生も、私たちのこと怪しんでないよね?
松井さんと私はダイニングテーブルの椅子に並んで腰掛けた。
水谷先生も私たちの前にゆっくりと座る。
「雄馬くんは、チナツちゃんと同じ会社に勤務してるんだって?」
先生はゆっくりと松井さんに尋ねた。
「はい。2ヶ月前にチナツさんの部署に転勤になりました」
「2ヶ月前か。じゃ、まだ付き合って間もないのかな?」
先生は、私の方に目線を向けた。
私には聞かないで-。嘘が苦手な私は水谷先生の視線に堪えきれずうつむいたまま頷いた。
「私も仲間に入れてよ~」
そこへ、お茶とお菓子をお盆にのせて陽気な母がテーブルにやってきた。
松井さんがいつの間にか用意していた手土産の和菓子がお皿に上品に乗っている。
そのお菓子はとても繊細な色をしていた。
淡い水色に白が混ざって、まるで海を切り取ったような。
「食べるのもったいないくらいきれいねぇ」
母はほおづえをついて、お菓子を眺めた。
まるで少女みたいな母をかわいいと思う。
きっと、先生がいるから余計ね。
いつもよりずっと若々しい感じがした。
恋はいくつになっても人を輝かせるのね。
いつも元気に振る舞う母だけど今日は体調はどうなのかな?
「ねーねー。どっちから告白したの?」
そんな私の心配を吹き消すかのように、母は相変わらずな感じで割って入ってきた。
「僕からです」
松井さんは何の躊躇いもなく答えた。
「え!そうなのー?チナツやるじゃない。こんな素敵な男性から告白されるなんて」
母ははしゃぎながら、私の腕をこづいた。
「もうはしゃぎすぎだって」
私は小さくつぶやくと、恥ずかしくて母の腕を掴んだ。
「でも、こんな何の取り柄もないような子に、どうしてまた?まさにキセキだわね」
「失礼ねっ」
私は母を軽くにらんだ。
松井さんはそんな母に微笑むと、ゆっくりと話し始めた。
「チナツさんを採用したのは実は僕なんです。お恥ずかしながら僕の一目惚れです」
「え?そうなの?雄馬くんがチナツを採用したって?」
目を丸くして私の方を見た母に私は平静を装いながら頷いた。
だけど、松井さんは一体何を言い出すのかしら。
膝の上で両手を握り締めながらドキドキしていた。
松井さんは私も母に言ってなかった、あの時のびしょ濡れで面接に遅刻してきたエピソードを話した。
「僕は、あんなにもまっすぐに困ってる人を助けるような女性に出会ったのは初めてでした。再会してその仕事ぶりを見ても何事にも一生懸命で。ただ、いつも頑張り屋でしっかり者のチナツさんですが、不意に見せる頼りなげな表情が僕の心を更に奪っていきました。僕が彼女をどんなときも守りたいと」
顔に血液が一気に上昇する。
恥ずかしすぎるよ。こんなこと母の前で言われちゃうなんて。
そう思いながらも、雄馬が時々私の方を優しく見つめるたびに体中が嬉しくて振るえていた。
「そうなのね。嬉しいわ。我が子のことそんな風に思ってくれてるなんて」
母はそう言うと、微笑みながら水谷先生と目を合わせてうなずいていた。
「チナツの一見気丈だけどそうでもないところをちゃんとわかってくれてるっていうのはお母さん、すごく安心だわ。雄馬くん、私がオーストラリアに行った後、チナツが迷惑かけるかもしれないけれどよろしくお願いします」
母の目が心なしか潤んでいる。
雄馬は母の目をしっかり見つめて「はい」と頷いた。
この2人の横顔を私は一生忘れないでおこうと胸に焼き付けていた。
その後はお茶をしながら、オーストラリアでの生活や今後の治療の話、雄馬の仕事の話なんかをして和やかに時間は過ぎていく。
いつの間にか雄馬が恋人役だっていうことを忘れてしまうくらいに楽しい一時だった。
母も水谷先生も、私たちのこと怪しんでないよね?
松井さんと私はダイニングテーブルの椅子に並んで腰掛けた。
水谷先生も私たちの前にゆっくりと座る。
「雄馬くんは、チナツちゃんと同じ会社に勤務してるんだって?」
先生はゆっくりと松井さんに尋ねた。
「はい。2ヶ月前にチナツさんの部署に転勤になりました」
「2ヶ月前か。じゃ、まだ付き合って間もないのかな?」
先生は、私の方に目線を向けた。
私には聞かないで-。嘘が苦手な私は水谷先生の視線に堪えきれずうつむいたまま頷いた。
「私も仲間に入れてよ~」
そこへ、お茶とお菓子をお盆にのせて陽気な母がテーブルにやってきた。
松井さんがいつの間にか用意していた手土産の和菓子がお皿に上品に乗っている。
そのお菓子はとても繊細な色をしていた。
淡い水色に白が混ざって、まるで海を切り取ったような。
「食べるのもったいないくらいきれいねぇ」
母はほおづえをついて、お菓子を眺めた。
まるで少女みたいな母をかわいいと思う。
きっと、先生がいるから余計ね。
いつもよりずっと若々しい感じがした。
恋はいくつになっても人を輝かせるのね。
いつも元気に振る舞う母だけど今日は体調はどうなのかな?
「ねーねー。どっちから告白したの?」
そんな私の心配を吹き消すかのように、母は相変わらずな感じで割って入ってきた。
「僕からです」
松井さんは何の躊躇いもなく答えた。
「え!そうなのー?チナツやるじゃない。こんな素敵な男性から告白されるなんて」
母ははしゃぎながら、私の腕をこづいた。
「もうはしゃぎすぎだって」
私は小さくつぶやくと、恥ずかしくて母の腕を掴んだ。
「でも、こんな何の取り柄もないような子に、どうしてまた?まさにキセキだわね」
「失礼ねっ」
私は母を軽くにらんだ。
松井さんはそんな母に微笑むと、ゆっくりと話し始めた。
「チナツさんを採用したのは実は僕なんです。お恥ずかしながら僕の一目惚れです」
「え?そうなの?雄馬くんがチナツを採用したって?」
目を丸くして私の方を見た母に私は平静を装いながら頷いた。
だけど、松井さんは一体何を言い出すのかしら。
膝の上で両手を握り締めながらドキドキしていた。
松井さんは私も母に言ってなかった、あの時のびしょ濡れで面接に遅刻してきたエピソードを話した。
「僕は、あんなにもまっすぐに困ってる人を助けるような女性に出会ったのは初めてでした。再会してその仕事ぶりを見ても何事にも一生懸命で。ただ、いつも頑張り屋でしっかり者のチナツさんですが、不意に見せる頼りなげな表情が僕の心を更に奪っていきました。僕が彼女をどんなときも守りたいと」
顔に血液が一気に上昇する。
恥ずかしすぎるよ。こんなこと母の前で言われちゃうなんて。
そう思いながらも、雄馬が時々私の方を優しく見つめるたびに体中が嬉しくて振るえていた。
「そうなのね。嬉しいわ。我が子のことそんな風に思ってくれてるなんて」
母はそう言うと、微笑みながら水谷先生と目を合わせてうなずいていた。
「チナツの一見気丈だけどそうでもないところをちゃんとわかってくれてるっていうのはお母さん、すごく安心だわ。雄馬くん、私がオーストラリアに行った後、チナツが迷惑かけるかもしれないけれどよろしくお願いします」
母の目が心なしか潤んでいる。
雄馬は母の目をしっかり見つめて「はい」と頷いた。
この2人の横顔を私は一生忘れないでおこうと胸に焼き付けていた。
その後はお茶をしながら、オーストラリアでの生活や今後の治療の話、雄馬の仕事の話なんかをして和やかに時間は過ぎていく。
いつの間にか雄馬が恋人役だっていうことを忘れてしまうくらいに楽しい一時だった。