強引ドクターの蜜恋処方箋
5章
インテリアコーディネーターの資格を無事取得したマリとお祝いを兼ねて会う約束をしていた。
最近残業続きだったけれど、早めに仕事を切り上げる。
今日は、マリにこれまであったことを報告するつもりだ。
松井さんとのことも。
マリはいつも私が思いもしないような助言をしてくれるから。
新しい自分の出発を前に、マリの話を聞きたかった。
マリとは、学生時代よく行ってた、居酒屋で待ち合わせている。
先に到着した私は予約していた席に座って、居酒屋の雰囲気を懐かしんでいた。
あの時とちっとも変わらない、愛想のいい店長さんや店内の妙にシンプルで小綺麗な感じ。
「ごめん!遅くなって!」
マリが髪の毛を振り乱して飛び込んできた。
「もう、大丈夫だって。そんなに慌てなくっても」
私は笑いながらマリの肩を軽く叩いた。
「ここで会うの久しぶりだし、すごく楽しみにしてたのよ。しゃべることいっぱいあるから一刻も早く来たかったの」
「私もいっぱい聞いてほしい話あるよ」
「聞く聞く!その前に生中頼んで乾杯しよ!」
そうこなくっちゃ。
昔よく頼んだタコのから揚げや、明太子パスタ、そばめしなんかをつまみながら、ビールを飲んだ。
大好きな友達と大好きな場所で過ごすことほど幸せな時間はない。
思い出話に花を咲かせながら、時々店内に響き渡るんじゃないかと思うくらいの大声で笑った。
一息ついた時、私はこれまであったことをゆっくりとマリに話はじめた。
田村さんとのこと。
母のこと。
そして、松井さんのこと。
マリはビールも飲まずに、私の目をしっかりと見つめて最後まで話を聞いてくれた。
「ちょっと会わない間に、色々あったのね。でも、」
マリは真剣な顔で私の頬に右手を添えると、
「今のチナツ、とっても輝いてる。いい顔してるわ」
と言った。
「え?そう?」
マリからそんな風に言われたの初めてだった。
いつも輝いてるのはマリで、私はいつもその影で素敵に輝くマリを指を咥えて見てるような存在だったから。
「お母さん、オーストラリアで治療に専念されるのね。それも恋人と一緒に!すっごい素敵。憧れちゃうわ。しかも、お相手は自分の主治医でしょ?」
マリはワインを飲みながら、ほおづえをついた。
「お母さんはとっても幸せね。きっと病気に勝てるわ」
マリにそう言われると、本当にそうなるような気になってくる。
「人を好きになるとその思いがキセキを呼び集めるのかもしれないね。最近つくづくそう思うの」
「へぇ、チナツにしては珍しく哲学的なこと言うじゃない」
「母を見てたらそんな風に感じてきちゃって」
私はビールを飲みながら、格好いいこと言い過ぎたかなと少し恥ずかしくなっていた。
「そうね。人は幸せな時、幸せオーラを振りまいて幸せを呼び込む力があるっていうのは私も実感したことあるよ。お母さんよかったね。あとチナツも」
マリは意味深ににやっと笑う。
「松井さんだっけ?イケメンで将来お医者様でしょ?チナツやるじゃん!」
マリは私のグラスに自分のグラスをカチンと合わせた。
「もう、声が大きいって」
思わず顔が熱くなる。
「チナツにもキセキが起こるかもよ。それとももう起こってる?」
起こり始めてるかもしれない。
ずっと踏み切ることに悩んでいた看護師になる夢。
松井さんから「一緒にがんばらないか?」と言われて、自分の中に一歩踏み出す勇気が湧き始めていた。
「実はね、ようやくなんだけど・・・看護師になる夢を叶えようと決意して、この間、看護学校に願書も出してきたの」
「へー、すごいじゃん。いつもなんだかんだ言って、前に踏み出せなかったチナツが?まさにキセキじゃない」
ほんのり頬がピンクに染まっているマリは、ワイングラスを揺らしながら目を丸くして言った。
最近残業続きだったけれど、早めに仕事を切り上げる。
今日は、マリにこれまであったことを報告するつもりだ。
松井さんとのことも。
マリはいつも私が思いもしないような助言をしてくれるから。
新しい自分の出発を前に、マリの話を聞きたかった。
マリとは、学生時代よく行ってた、居酒屋で待ち合わせている。
先に到着した私は予約していた席に座って、居酒屋の雰囲気を懐かしんでいた。
あの時とちっとも変わらない、愛想のいい店長さんや店内の妙にシンプルで小綺麗な感じ。
「ごめん!遅くなって!」
マリが髪の毛を振り乱して飛び込んできた。
「もう、大丈夫だって。そんなに慌てなくっても」
私は笑いながらマリの肩を軽く叩いた。
「ここで会うの久しぶりだし、すごく楽しみにしてたのよ。しゃべることいっぱいあるから一刻も早く来たかったの」
「私もいっぱい聞いてほしい話あるよ」
「聞く聞く!その前に生中頼んで乾杯しよ!」
そうこなくっちゃ。
昔よく頼んだタコのから揚げや、明太子パスタ、そばめしなんかをつまみながら、ビールを飲んだ。
大好きな友達と大好きな場所で過ごすことほど幸せな時間はない。
思い出話に花を咲かせながら、時々店内に響き渡るんじゃないかと思うくらいの大声で笑った。
一息ついた時、私はこれまであったことをゆっくりとマリに話はじめた。
田村さんとのこと。
母のこと。
そして、松井さんのこと。
マリはビールも飲まずに、私の目をしっかりと見つめて最後まで話を聞いてくれた。
「ちょっと会わない間に、色々あったのね。でも、」
マリは真剣な顔で私の頬に右手を添えると、
「今のチナツ、とっても輝いてる。いい顔してるわ」
と言った。
「え?そう?」
マリからそんな風に言われたの初めてだった。
いつも輝いてるのはマリで、私はいつもその影で素敵に輝くマリを指を咥えて見てるような存在だったから。
「お母さん、オーストラリアで治療に専念されるのね。それも恋人と一緒に!すっごい素敵。憧れちゃうわ。しかも、お相手は自分の主治医でしょ?」
マリはワインを飲みながら、ほおづえをついた。
「お母さんはとっても幸せね。きっと病気に勝てるわ」
マリにそう言われると、本当にそうなるような気になってくる。
「人を好きになるとその思いがキセキを呼び集めるのかもしれないね。最近つくづくそう思うの」
「へぇ、チナツにしては珍しく哲学的なこと言うじゃない」
「母を見てたらそんな風に感じてきちゃって」
私はビールを飲みながら、格好いいこと言い過ぎたかなと少し恥ずかしくなっていた。
「そうね。人は幸せな時、幸せオーラを振りまいて幸せを呼び込む力があるっていうのは私も実感したことあるよ。お母さんよかったね。あとチナツも」
マリは意味深ににやっと笑う。
「松井さんだっけ?イケメンで将来お医者様でしょ?チナツやるじゃん!」
マリは私のグラスに自分のグラスをカチンと合わせた。
「もう、声が大きいって」
思わず顔が熱くなる。
「チナツにもキセキが起こるかもよ。それとももう起こってる?」
起こり始めてるかもしれない。
ずっと踏み切ることに悩んでいた看護師になる夢。
松井さんから「一緒にがんばらないか?」と言われて、自分の中に一歩踏み出す勇気が湧き始めていた。
「実はね、ようやくなんだけど・・・看護師になる夢を叶えようと決意して、この間、看護学校に願書も出してきたの」
「へー、すごいじゃん。いつもなんだかんだ言って、前に踏み出せなかったチナツが?まさにキセキじゃない」
ほんのり頬がピンクに染まっているマリは、ワイングラスを揺らしながら目を丸くして言った。