強引ドクターの蜜恋処方箋
「しばらくはお勉強だね」

マリはほおづえをついて、眠そうな目で続けた。

「そう。まだ頭が働くかどうか心配だけどね」

「大丈夫よ。私だって合格したんだから」

「マリは特別よ。昔から頭良かったし、チャレンジ精神も人並み外れてたもん」

「ただの変わり者よ」

マリは照れくさそうに笑った。

「そういえば、マリはインテリアコーディネーターの資格取ったけどこれからどうするの?」

マリは私を上目遣いで見るとにんまり笑った。

「今の仕事辞めて、来月からイギリスにインテリアの勉強しに留学します!」

立ち上がりそうな勢いでそう言った。

「イギリス?!」

「うん、またイギリス。前からイギリスのインテリアに興味があってね。現地で働いて本格的に学ぼうかと思って」

「すごいなぁ。私とはスケールが違うよ」

「そんなことはないって。あとさ、ずっと付き合ってた彼ととうとう別れたの。永き春に終止符が打たれたっていうか」

「え?本当に?」

さらに驚きだった。

マリには二歳上の彼がいた。付き合いも長くていつ結婚してもおかしくなかった。

「永すぎる春は、やっぱり成就しないもんねぇ」

軽くため息をついて、前髪を掻き上げた。

「でも、どうして?いい人だったのに」

「インテリア勉強し始めたのも、一種の賭だったんだよね。私がさらに彼から離れようとしたら彼はどうするかなって」

少し寂しい目をしたマリは、視線をグラスに落とした。

「彼からは、それでも『結婚』っていう二文字は出なかったの。『好きにすればいい』とだけ言ってね」

「それは、マリが自由に好きなことやらしてあげたいっていう思いからなんじゃないの?」

「私にはそうは思えなかった。多分、『好きにすればいい』=『どうでもいい』んじゃないかなってね」



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