強引ドクターの蜜恋処方箋
マリは少し寂しそうに笑った。

「本当は引き留めてほしかったなぁーって」

「でも、マリは引き留められたってイギリスには飛んでるでしょ?」

マリはそう言った私の顔を見て声を立てて笑った。

「そうね。いずれにしても飛んでるわ。って考えたら結局同じ結果なのよね。もういいの。イギリスでせいぜい羽伸ばしてくるわ」

マリはグラスに残ったワインを飲み干した。

いつもより飲みっぷりがいいのは、そういうことだったのかとようやく理解した。

そして、もう何を言っても、マリの決別の意志が固いことも。

「羽目は外さないでね」

今にも目が閉じそうなマリのおでこをつついた。

「随分飲んだね。ちょっと覚ます?」

「そうだね。若干やけ酒気味?」

そう言ってマリはテーブルに突っ伏して笑った。

「マリって、以前イギリスに留学してたとき、イギリス人の彼氏いたよね?誰だっけ、チャールズだったっけ?」

「ああ、そうそうチャールズ」

そう言いながら、頬杖をついて懐かしそうな目をした。

「チャールズはまだロンドンで暮らしてるの?」

「うん、ロンドンで元気にしてるわ」

「あれ?まだ連絡とってるんだ」

「うん、まあね。今回のイギリス行きの件でも随分色々と助けてもらったのよ」

私には元彼に連絡だなんて到底できないこと、これまたマリはあっさりやってのけちゃう。

「色んな相談してるうちに、チャールズに『留学中、僕の部屋に住めばいい』なんて言い出されちゃってさ。びっくりしたよ」

「えー!一緒に住むの?!チャールズはまだマリに思いが残ってたんだ」

「別れてからもちょくちょく連絡取り合ってたからね。色々手続きも面倒くさいし、お金もかかるし、結局チャールズの部屋にお世話になることにしたのよ」

「ほんとに!?彼と別れたばっかなのに!いいの??一緒の部屋って」



< 51 / 114 >

この作品をシェア

pagetop