強引ドクターの蜜恋処方箋
「いいのいいの。チャールズはいつも優しくて紳士だし、日本人の男と同棲するより居心地いいのよねぇ」

マリは両手で頬を挟んで、うっとりした表情を浮かべた。

全くマリって人の行動と決断力の速さは絶品だわ。ある意味感心する。

「じゃ、チャールズと寄りが戻るってこともあり得るわけ?」

「それは行ってからのお楽しみだけどね」

そう言って、マリはいたずらっぽく笑った。

いつもマリは思い切った行動に出る。

私には理解できないことも多かったけど、密かにそんなマリがうらやましくもあった。


「ま、とりあえず、二人の新しい門出に乾杯だね」

私はマリのグラスと自分のグラスにワインを注いだ。

「そ、乾杯!」

二人のグラスが、軽やかな美しい響きを奏でた。

マリもまた、胸の内に悲しみを秘めて新しい場所に旅立とうとしている。

ひょっとしたら、悲しみや寂しさは出発の原動力になるのかもしれない。

帰り際、マリが私を振り返って言った。

「松井さん、いい男だからぜーったい離しちゃだめよ」

体中にアルコールが回ってるマリからの言葉としては、説得力があるようでないような。

私は笑って頷いた。
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