強引ドクターの蜜恋処方箋
部屋はエレベーターを降りた一番突き当たりだった。

松井さんはカード式のキーで玄関の扉を開けた。

開かれた玄関の向こうには広い玄関、そして長く伸びる広い廊下が続き、その奥には全面窓になったリビングが半分見えていた。

「どうぞあがって」

松井さんの声に促されて、私は吸い込まれるように家の中に入っていった。

広いリビングは1人で住むには広すぎるくらい広くて、白い壁の前に品のいいアンティークな家具が数少ないながらに整然と置かれていた。

そして、大きな革張りの黒いソファーがリビングの中央に窓の方に向けて置かれてあった。

リビングのバルコニー側は全面窓だ。

この窓だけで十分だわと思いながら窓にはりついて外を眺めていると、雄馬が笑いながらベランダに出るれるよう開けてくれた。

すーっと柔らかい風がベランダから部屋の中に吹き込んだ。

ベランダに置かれたスリッパを履いて外に出る。

ベランダからは、都心の夜景が一望できた。

「すごい!」

星空のような光の数の多さに思わずため息がもれる。

瞬く夜景の光達はまるで地上の宇宙のようだった。

いつまででも観ていられる景色。

ベランダの手すりにもたれて、その光達を見ていた。

今、私は松井さんの部屋でこんなに素敵な景色を独り占めしてる。

いつの間にか何のためにここに来たのか忘れてしまうほどに感動していた。

その時、私の背後から抱きすくめられた。

松井さんの吐く息が私の首元をくすぐる。

背中に感じる彼の鼓動はとても速かった。

「チナツの答え、そろそろ聞かせてくれない?」

私の胸の前に組まれた腕にそっと触れた。

「私・・・」

大きく深呼吸する。

「看護師目指そうと思っています」

「まずはそっちか」

松井さんが私の肩におでこを付けて笑った。

私もやっぱり順番が違うよなと笑ってる松井さんにつられて吹き出す。

そんな私の両肩を掴んで松井さんは私の体を正面に向けた。

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