強引ドクターの蜜恋処方箋
「田村さん、お疲れさまです」

そう言った私に、相変わらず自然な感じで色気を纏った田村さんは爽やかな笑顔で尋ねてきた。

「何時に来たの?」

「ついさっきです。田村さんは今日はいつもより早くないですか?」

「うん。今日はちょっと後輩をこき使って、残業を早めに切り上げた。南川さんと早く会いたくてね」

そう言うと、サラサラの前髪を掻き上げ、上目使いできれいな二重の目を私に向ける。

田村さんは、ほんと母性本能をくすぐるのが上手だ。

そんな風に言われたら大抵の女性はドキっとするんだろう。

ユカから硬く田村さんにはなびかないよう忠告されてる私は、敢えて軽く笑ってそんな田村さんを受け流すと、足の回転を徐々に早めていった。

「じゃ、僕はあっちのマシーンで体をほぐしてくるよ」

「はい」

少し離れた別々の場所で汗を流す。

私は、サイクリングマシーン。

田村さんはウォーキングマシーン。

時々目が合うと、彼は優しく笑った。

別に悪い人ではないんだろうけどね。

やっぱり軽はずみな反応は避けたい人種かもしれないなと思っていた。
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