強引ドクターの蜜恋処方箋
「クリスマスだのお正月だのバレンタインだの、ほんと日本人ってお祭り好きだよな。俺にはどうもついていけない」

色とりどりに点灯しているイルミネーションを眺めながらゆっくりと歩きながら雄馬さんが言った。

「楽しくていいと思いますけど?何もないとそれはそれでつまらないような気がします」

「そうか?俺はチナツさえ隣にいてくれたらつまらなくないけど」

雄馬さんの手にぎゅっと力がこもった。

道添いのケーキ屋さんの前でサンタクロースに扮した男性がクリスマスケーキを売っていた。

「そこの素敵なお二人さん!クリスマスケーキもこれで最後だよ。買っていかない?」

ふいにそのサンタクロースに声をかけられた雄馬さんは足を止めた。

そして私の顔を何か言いたげな表情で見つめ、再びサンタクロースに顔を向けた。

「じゃ、一つ下さい」

結局買うんだ。

ケーキを買ってる雄馬さんの後ろ姿がとても愛おしくて思わず笑ってしまう。

紙袋を手にした雄馬さんは、私の方を振り返って少し照れくさそうに言った。

「チナツとなら少しくらいは便乗してもいいかなと思って」

私は笑って頷くと彼の手を取った。

今夜は久しぶりのデート。

試験まであと少し、2人一緒なら乗り切れるような気がした。









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