強引ドクターの蜜恋処方箋
案の定、ふわふわの砂に足を取られて派手に転んでしまった。
「痛っ!」
手を付いた先に落ちていた貝殻で手の平を切ってしまったようだ。
私の手の平には赤い血がにじんでいた。
「大丈夫?ごめん、ふざけすぎたよ」
雄馬さんはすぐに私の方へ走り寄ってきた。
そして、私の体を抱き起こすと、手の平の砂を自分のハンカチで払い、心配そうな顔で血のにじむ傷口を色んな角度から見始めた。
そんな雄馬さんに不謹慎と思いつつ、
「まるで診察されてるみたい」
と言って、吹き出してしまった。
「心配してるのに、何笑ってるんだよ」
雄馬さんは私の方を軽くにらむと、そのまま私の傷口に自分の唇を押し当てた。
柔らかくて温かい唇が私の傷口を覆う。
「ど、どうしたんですか?」
思いもしなかった行為に、驚いた顔で雄馬さんを見た。
彼の唇と舌の熱が麻酔に似たしびれをもたらす。
不思議と傷の痛みが和らいでいった。
そっと唇が手の平から離れる。
「傷口を舐めると早く治るって以前は都市伝説だったんだけど、最近医学的にも証明されたらしい」
そう言うと、私の体を自分の胸に引き寄せて、「切り傷だからすぐ治るよ。痛い思いさせっちゃったな」と言いながら、私の唇をゆっくりと自分の指でそっとなぞった。
雄馬の長くて冷たい指の動きに、私の胸の高鳴りが全身に響いている。
その手はそのまま私の頬を柔らかく包んだ。
雄馬さんの美しい顔が私の正面を捕らえる。
「どうにかなっちゃいそうだ」
そう言うと、私の唇にそっとキスをした。
雄馬さんの体温が私の体を浸透していくような優しくて熱いキスだった。
彼の胸にそっと手を当てると、その胸の鼓動が手の平の傷口から私の中に伝わってきた。
今ここに間違いなく雄馬さんが存在しているという安心感に私の高揚は少しずつ落ち着いてくる。
唇が離れた時、
「私の唇も怪我してましたか?」
と冗談交じりに尋ねると、
「・・・チナツも言うなぁ」
とすねた表情で横を向いた。
「普段やられっぱなしじゃね」
私は笑いながらそのすねた背中に軽く手を当てた。
思わずその背中に『大好き』と言ってしまいそうになる。
でも、恥ずかしくて言うのはやめた。
なんだか今言葉にしてしまうと、気持ちが溢れて止まらなくなりそうだったから。
そして、私達は濡れた洋服が乾くまで、しばらくテトラポットに並んで座り海を眺めた。
雄馬さんは笑いながら時々私の頬や耳にキスをしてきた。
彼の肩にもたれて目を閉じると、波が打ち寄せる音だけが静かに耳に響いている。
まるでこの世界には2人しかいないみたいな錯覚に陥りながら。
とても穏やかな時間。
何も話さなくても、こうして隣で体温を感じていられるだけで十分だった。
「今日は、この近くのレストランでディナーを予約してるんだ」
「そうなんですか?嬉しい。ひょっとして海辺のレストランですか?」
「うん。サンセットが一望できる席があってね。今日は天気もいいからきれいな夕日が見られると思う。そろそろ行くか」
雄馬さんは立ち上がると自分のズボンの砂を払い、私の手を握った。
「痛っ!」
手を付いた先に落ちていた貝殻で手の平を切ってしまったようだ。
私の手の平には赤い血がにじんでいた。
「大丈夫?ごめん、ふざけすぎたよ」
雄馬さんはすぐに私の方へ走り寄ってきた。
そして、私の体を抱き起こすと、手の平の砂を自分のハンカチで払い、心配そうな顔で血のにじむ傷口を色んな角度から見始めた。
そんな雄馬さんに不謹慎と思いつつ、
「まるで診察されてるみたい」
と言って、吹き出してしまった。
「心配してるのに、何笑ってるんだよ」
雄馬さんは私の方を軽くにらむと、そのまま私の傷口に自分の唇を押し当てた。
柔らかくて温かい唇が私の傷口を覆う。
「ど、どうしたんですか?」
思いもしなかった行為に、驚いた顔で雄馬さんを見た。
彼の唇と舌の熱が麻酔に似たしびれをもたらす。
不思議と傷の痛みが和らいでいった。
そっと唇が手の平から離れる。
「傷口を舐めると早く治るって以前は都市伝説だったんだけど、最近医学的にも証明されたらしい」
そう言うと、私の体を自分の胸に引き寄せて、「切り傷だからすぐ治るよ。痛い思いさせっちゃったな」と言いながら、私の唇をゆっくりと自分の指でそっとなぞった。
雄馬の長くて冷たい指の動きに、私の胸の高鳴りが全身に響いている。
その手はそのまま私の頬を柔らかく包んだ。
雄馬さんの美しい顔が私の正面を捕らえる。
「どうにかなっちゃいそうだ」
そう言うと、私の唇にそっとキスをした。
雄馬さんの体温が私の体を浸透していくような優しくて熱いキスだった。
彼の胸にそっと手を当てると、その胸の鼓動が手の平の傷口から私の中に伝わってきた。
今ここに間違いなく雄馬さんが存在しているという安心感に私の高揚は少しずつ落ち着いてくる。
唇が離れた時、
「私の唇も怪我してましたか?」
と冗談交じりに尋ねると、
「・・・チナツも言うなぁ」
とすねた表情で横を向いた。
「普段やられっぱなしじゃね」
私は笑いながらそのすねた背中に軽く手を当てた。
思わずその背中に『大好き』と言ってしまいそうになる。
でも、恥ずかしくて言うのはやめた。
なんだか今言葉にしてしまうと、気持ちが溢れて止まらなくなりそうだったから。
そして、私達は濡れた洋服が乾くまで、しばらくテトラポットに並んで座り海を眺めた。
雄馬さんは笑いながら時々私の頬や耳にキスをしてきた。
彼の肩にもたれて目を閉じると、波が打ち寄せる音だけが静かに耳に響いている。
まるでこの世界には2人しかいないみたいな錯覚に陥りながら。
とても穏やかな時間。
何も話さなくても、こうして隣で体温を感じていられるだけで十分だった。
「今日は、この近くのレストランでディナーを予約してるんだ」
「そうなんですか?嬉しい。ひょっとして海辺のレストランですか?」
「うん。サンセットが一望できる席があってね。今日は天気もいいからきれいな夕日が見られると思う。そろそろ行くか」
雄馬さんは立ち上がると自分のズボンの砂を払い、私の手を握った。