強引ドクターの蜜恋処方箋
「この場所でならチナツは正直に言ってくれるかな」
雄馬さんは私の目をじっと見つめた。
「何がそんなにチナツを不安にさせてるんだ?」
山鳥だろうか。
かわいらしい声でさえずりながら木立を飛び立った。
私を見つめる雄馬さんの目は泣きそうなくらいに真剣で、私まで泣きそうになる。
素直に。
きちんと言おう。
今なら言える。
私は雄馬の目をしっかり見つめながら、実習中に看護師さん達から聞いた話を伝えた。
「峰岸先生はとてもきれいで、優秀で私なんかより雄馬さんにふさわしいのかもしれないって。そう思ったら何もかもが不安に見えてきたの」
その直後、雄馬さんの真剣な目がふっと緩んだ。
「そんなことで悩んでたのか?っていうか嫉妬してくれてたの?」
雄馬さんはそう言うと私を正面からぎゅっと抱きしめた。
「もしそうだったら俺、めちゃくちゃ嬉しいよ。チナツが嫉妬してくれてるくらいに俺のこと思ってくれてるなんて」
な、何??
この意外な展開に驚きながらもようやく胸の内を雄馬さんに伝えられたことに安堵している自分がいた。
その後、雄馬さんは私にゆっくりとわかりやすく話してくれた。
峰岸先生が大学時代の自分の同級生で、既に自分のよく知る先輩と結婚していて子供が3人もいること。
朝まで会議室に入っていたのは事実だけれど、2人きりではなく、他にも研修医が3人入っていたということも。
そうだったんだ。
これまでの私の息苦しいほどの胸のつっかえが氷水のように溶けていく。
「それに、俺、峰岸先生だけにはチナツと付き合ってること伝えてあったんだ」
「え?そうだったんですか?」
「彼女は小児科のトップだし、チナツが何か困った時は助けてやってほしいってね」
峰岸先生は、時々私に親しげに話し掛けてくれたけど、それって、そういうことだったの?
頭の中にあった私の勝手な思い込みが完全に訂正されていった。
「俺も、チナツは本当に俺でいいのかってずっと心配だった。俺が強引にチナツを引き留めてるだけじゃないかって」
私の胸は雄馬さんの言葉を刻みながらずっと甘く振るえていた。
「これだけは絶対忘れないでほしい」
熱い瞳で見つめながら続けた。
「俺にはチナツしか見えないから。これから先もずっと」
雄馬さんの熱い吐息が耳にかかり、体が麻酔がかかったようにしびれて動けなくなる。
「これからもお互い忙しくて会えない時間があるかもしれないけど、俺の心にはいつもチナツしかいない。信じていてほしい。何よりも誰よりもチナツが大切だから」
「ありがとう」
私は頷いて雄馬さんの胸に顔を埋めた。
「あと、」
一呼吸置いて言った。
「お誕生日おめでとう」
「え?!」
思わずその胸から顔を上げた。
「今日チナツの誕生日だろ?」
「どうしてそれを?」
「こんなことするのもどうかとは思ったんだけどさ、峰岸先生に頼んで、看護学校から提出されてたチナツの履歴書見てもらったんだ。今更誕生日いつ?なんて直接チナツに聞くのも格好悪いなと思ってさ」
胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。
「だから、今日を選んで旅行に誘ってくれたんですか?」
雄馬さんは照れくさそうに頷いた。
私の涙に気付いたのか気付いていないのかわからないけれど、雄馬さんは私の肩をまた優しく抱くと、
「さ、そろそろ宿に戻ろうか。夜も朝も部屋食らしいよ。温泉にも浸かって明日まで2人でゆっくり過ごそう」
と石段の方に向かって歩き出した。
「はい」
「言っとくけど、今晩は寝かせないからな。覚悟しとけよ」
雄馬さんは笑いながら私の鼻の頭を人差し指で突いた。
「そんなこと言ってるけど、いつも先に寝るのは雄馬さんですけどね」
私は流れ落ちた涙を手でぬぐいながら笑った。
こんなにも満たされた気持ちで向かえた自分の誕生日は初めてだった。
雄馬さんと出会って、私の初めてが増えていく。
全てが、愛おしくて幸せな初めてだった。
その日の夜、雄馬さんは断言通り朝まで私を熱くそして甘く愛してくれた。
寝息を立て始めたのはやっぱり雄馬さんが先だったけれど、その寝息を聞きながら、私にとってかけがえのない2人の時間を一つ一つ胸に刻んでいく。
雄馬の上下する胸にそっと手を置いて私も目を閉じた。
雄馬さんは私の目をじっと見つめた。
「何がそんなにチナツを不安にさせてるんだ?」
山鳥だろうか。
かわいらしい声でさえずりながら木立を飛び立った。
私を見つめる雄馬さんの目は泣きそうなくらいに真剣で、私まで泣きそうになる。
素直に。
きちんと言おう。
今なら言える。
私は雄馬の目をしっかり見つめながら、実習中に看護師さん達から聞いた話を伝えた。
「峰岸先生はとてもきれいで、優秀で私なんかより雄馬さんにふさわしいのかもしれないって。そう思ったら何もかもが不安に見えてきたの」
その直後、雄馬さんの真剣な目がふっと緩んだ。
「そんなことで悩んでたのか?っていうか嫉妬してくれてたの?」
雄馬さんはそう言うと私を正面からぎゅっと抱きしめた。
「もしそうだったら俺、めちゃくちゃ嬉しいよ。チナツが嫉妬してくれてるくらいに俺のこと思ってくれてるなんて」
な、何??
この意外な展開に驚きながらもようやく胸の内を雄馬さんに伝えられたことに安堵している自分がいた。
その後、雄馬さんは私にゆっくりとわかりやすく話してくれた。
峰岸先生が大学時代の自分の同級生で、既に自分のよく知る先輩と結婚していて子供が3人もいること。
朝まで会議室に入っていたのは事実だけれど、2人きりではなく、他にも研修医が3人入っていたということも。
そうだったんだ。
これまでの私の息苦しいほどの胸のつっかえが氷水のように溶けていく。
「それに、俺、峰岸先生だけにはチナツと付き合ってること伝えてあったんだ」
「え?そうだったんですか?」
「彼女は小児科のトップだし、チナツが何か困った時は助けてやってほしいってね」
峰岸先生は、時々私に親しげに話し掛けてくれたけど、それって、そういうことだったの?
頭の中にあった私の勝手な思い込みが完全に訂正されていった。
「俺も、チナツは本当に俺でいいのかってずっと心配だった。俺が強引にチナツを引き留めてるだけじゃないかって」
私の胸は雄馬さんの言葉を刻みながらずっと甘く振るえていた。
「これだけは絶対忘れないでほしい」
熱い瞳で見つめながら続けた。
「俺にはチナツしか見えないから。これから先もずっと」
雄馬さんの熱い吐息が耳にかかり、体が麻酔がかかったようにしびれて動けなくなる。
「これからもお互い忙しくて会えない時間があるかもしれないけど、俺の心にはいつもチナツしかいない。信じていてほしい。何よりも誰よりもチナツが大切だから」
「ありがとう」
私は頷いて雄馬さんの胸に顔を埋めた。
「あと、」
一呼吸置いて言った。
「お誕生日おめでとう」
「え?!」
思わずその胸から顔を上げた。
「今日チナツの誕生日だろ?」
「どうしてそれを?」
「こんなことするのもどうかとは思ったんだけどさ、峰岸先生に頼んで、看護学校から提出されてたチナツの履歴書見てもらったんだ。今更誕生日いつ?なんて直接チナツに聞くのも格好悪いなと思ってさ」
胸の奥から熱いものがこみ上げてくる。
「だから、今日を選んで旅行に誘ってくれたんですか?」
雄馬さんは照れくさそうに頷いた。
私の涙に気付いたのか気付いていないのかわからないけれど、雄馬さんは私の肩をまた優しく抱くと、
「さ、そろそろ宿に戻ろうか。夜も朝も部屋食らしいよ。温泉にも浸かって明日まで2人でゆっくり過ごそう」
と石段の方に向かって歩き出した。
「はい」
「言っとくけど、今晩は寝かせないからな。覚悟しとけよ」
雄馬さんは笑いながら私の鼻の頭を人差し指で突いた。
「そんなこと言ってるけど、いつも先に寝るのは雄馬さんですけどね」
私は流れ落ちた涙を手でぬぐいながら笑った。
こんなにも満たされた気持ちで向かえた自分の誕生日は初めてだった。
雄馬さんと出会って、私の初めてが増えていく。
全てが、愛おしくて幸せな初めてだった。
その日の夜、雄馬さんは断言通り朝まで私を熱くそして甘く愛してくれた。
寝息を立て始めたのはやっぱり雄馬さんが先だったけれど、その寝息を聞きながら、私にとってかけがえのない2人の時間を一つ一つ胸に刻んでいく。
雄馬の上下する胸にそっと手を置いて私も目を閉じた。