強引ドクターの蜜恋処方箋
家事を一通り済ませると、早めに出る用意をした。
ベージュの厚手のコートにオフホワイトのマフラーを巻く。
手袋は、こないだのお誕生日に雄馬さんからプレゼントしてもらったブラウンの皮の手袋。
これがとても暖かい。
本皮の手袋なんて、とても贅沢で自分では買ったことなかった。
柔らかい皮は手を入れるとすっと馴染んだ。雄馬さんの手に包まれてるみたいに。
ロングブーツを履いて、玄関の扉をそっと閉めた。
外の風はとても冷たかった。
12月入ったばかりだというのに、真冬のような寒さだ。
そういえば、オーストラリアは日本と季節が逆だから今は夏。
いくら元気になった母とはいえ、この日本の冬の寒さはきっと堪えるだろう。
ちゃんと暖かい格好してきてるのかしら。
少し心配になって、待ち合わせ場所まで急ぎ足になる。
待ち合わせ時間の30分ほど前にカフェに到着した。
店内はホッとするほど暖かかった。
「チナツ!」
私の後ろで声がした。
あの時みたいに、母が席についたまま手を振っていた。
母は、マスクをつけていた。
そうそう、ちゃんと予防対策もできてて上等。
マスクの上の目元が嬉しそうに笑っていた。
「お母さんも早く着いたのね」
私はコートを脱ぎながら母の席に向かった。
「ええ、もう待ちきれなくてね」
母は私の手を握ると、
「きれいになった。チナツ。すっごくきれいよ」
と目を潤ませて言った。
「えー、そう?何も変わってないわ」
母の涙に気付かないふりをしながらそう言うと、母が発った後、劇的に変わった自分自身と自分の生活を思う。
「今日は一段と冷えるけど、寒くない格好してきた?」
私は母の背もたれにかかったジャケットに目をやる。
「大丈夫。私の持ってる一番暖かいダウンを持ってきてるから。あと、マフラーも」
そう言って、毛糸で編んだピンクのマフラーを自分のバッグから出して見せた。
「かわいいマフラーね。自分で編んだの?」
私は思わずそのかわいらしいピンク色のマフラーを見て冷やかした。
「そうよ。入院している間暇だったから自分で編んだの」
「そうなんだ。お母さんやるじゃん」
ピンクのマフラーは相当使っているのか、ところどころ毛糸の糸がからまって玉になっていた。
「お母さん、元気だった?」
母の手をそっと握り返す。
「ええ、顔色もいいでしょ?」
「ほんと、見違えるようだわ」
母は朗らかに笑った。
「会えなかった間のチナツに起こったこと、教えて。雄馬くんのことメインで」
母は、ウィンクしながら言った。
「そうね、まずは看護学校のことから話そうかなぁ」
私はわざとらしく話を逸らして、そして、母と顔を見合わせてまた笑った。
母は、これまでの私の話をまっすぐに見つめながら聞いてくれた。
時々怒りながら、一緒に笑いながら、そしてふと涙を浮かべながら。
ベージュの厚手のコートにオフホワイトのマフラーを巻く。
手袋は、こないだのお誕生日に雄馬さんからプレゼントしてもらったブラウンの皮の手袋。
これがとても暖かい。
本皮の手袋なんて、とても贅沢で自分では買ったことなかった。
柔らかい皮は手を入れるとすっと馴染んだ。雄馬さんの手に包まれてるみたいに。
ロングブーツを履いて、玄関の扉をそっと閉めた。
外の風はとても冷たかった。
12月入ったばかりだというのに、真冬のような寒さだ。
そういえば、オーストラリアは日本と季節が逆だから今は夏。
いくら元気になった母とはいえ、この日本の冬の寒さはきっと堪えるだろう。
ちゃんと暖かい格好してきてるのかしら。
少し心配になって、待ち合わせ場所まで急ぎ足になる。
待ち合わせ時間の30分ほど前にカフェに到着した。
店内はホッとするほど暖かかった。
「チナツ!」
私の後ろで声がした。
あの時みたいに、母が席についたまま手を振っていた。
母は、マスクをつけていた。
そうそう、ちゃんと予防対策もできてて上等。
マスクの上の目元が嬉しそうに笑っていた。
「お母さんも早く着いたのね」
私はコートを脱ぎながら母の席に向かった。
「ええ、もう待ちきれなくてね」
母は私の手を握ると、
「きれいになった。チナツ。すっごくきれいよ」
と目を潤ませて言った。
「えー、そう?何も変わってないわ」
母の涙に気付かないふりをしながらそう言うと、母が発った後、劇的に変わった自分自身と自分の生活を思う。
「今日は一段と冷えるけど、寒くない格好してきた?」
私は母の背もたれにかかったジャケットに目をやる。
「大丈夫。私の持ってる一番暖かいダウンを持ってきてるから。あと、マフラーも」
そう言って、毛糸で編んだピンクのマフラーを自分のバッグから出して見せた。
「かわいいマフラーね。自分で編んだの?」
私は思わずそのかわいらしいピンク色のマフラーを見て冷やかした。
「そうよ。入院している間暇だったから自分で編んだの」
「そうなんだ。お母さんやるじゃん」
ピンクのマフラーは相当使っているのか、ところどころ毛糸の糸がからまって玉になっていた。
「お母さん、元気だった?」
母の手をそっと握り返す。
「ええ、顔色もいいでしょ?」
「ほんと、見違えるようだわ」
母は朗らかに笑った。
「会えなかった間のチナツに起こったこと、教えて。雄馬くんのことメインで」
母は、ウィンクしながら言った。
「そうね、まずは看護学校のことから話そうかなぁ」
私はわざとらしく話を逸らして、そして、母と顔を見合わせてまた笑った。
母は、これまでの私の話をまっすぐに見つめながら聞いてくれた。
時々怒りながら、一緒に笑いながら、そしてふと涙を浮かべながら。