強引ドクターの蜜恋処方箋
雄馬さんはワイングラスをテーブルに置くと、私の両手を握って正面で向き合った。

そしてまっすぐ私の目を見つめながら言った。

「事故で負傷した日、病室でチナツが俺を抱きしめてくれた時からずっと思ってることがある」

彼の目にいつになく緊張感が漂っている。その目に私も胸が痛くなるほどにドキドキしていた。

雄馬さんの頬が少し赤い。

ワインのせい?その潤んだ瞳をじっと見つめ返した。

「俺はこれからの人生をチナツと生きていきたい」

そして私を優しく抱き寄せた。彼の体はものすごく熱くてその鼓動は速かった。

「結婚しよう」

雄馬さんの胸からその言葉が私の体に響いてきた。

・・・結婚?

雄馬さんと?

あまりに突然のプロポーズにすぐに言葉が出ないくらいに感動で胸が震えていた。

「・・・本当に私でいいんですか?」

「俺はチナツ以外考えられない」

雄馬さんは優しく微笑むと、私の頭の上にそっと手を置いた。

その手の温かい重みを感じながら雄馬さんの目をしっかり見つめ返す。

「私もずっと雄馬さんと生きていきたい」

「・・・チナツ」

雄馬さんは私の頬に自分の手の平を当てた。温かくて大きな私の大好きな手。

「必ず幸せにする」

そして私の唇を優しく塞いだ。

甘いワインの香りがする。

雄馬さんの強い思いを唇で受け止めながら、人生を預けられるのはこの人だけだと思った。

こんなにも愛していて、そしてこんなにも愛されていて。

そして、私達は結婚する。

結婚を決める時って、こんなにも自然で素直な気持ちで受け入れられるものだったんだ。

とても穏やかな幸せとぬくもりを感じていた。

出会ってからの色んな出来事の1つ1つがパズルのピースになって私達の今を作りあげている。

どの思い出も欠けてはならない大切なもの。

今日という日は、私達にとって一番かけがえのない1ピースになるんだろう。きっと・・・。







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