強引ドクターの蜜恋処方箋
一緒に暮らし始めて二度目のクリスマスが訪れた。

街はキラキラと彩られ、賑やかな音楽が流れている。

昨年は看護師学校の勉強や仕事で忙しくてクリスマスすら忘れてたよな。

だけど、お医者さんにはクリスマスであろうなかろうとあまり関係がない。

雄馬さんはいつものように病院に出勤し、オペが2件入っていた。

今日も遅くなると言っていたので、看護学校で親しくなった宮本ユウヒと一緒に食事をする約束をしていた。

ユウヒは、まだ二十歳。

私とは随分年齢差があったけれど、映画好きという共通の趣味があってよく学校が終わった後、一緒に映画を見に行った。

まだまだ学生気分の抜けない無邪気なユウヒはとてもかわいかった。

「チナツさん!」

ユウヒは、クリスマスのイルミネーションで飾られたショーウィンドウの前で待っていた私に駆け寄ってきた。

「今日はどこに食べにつれていってくれるんですか?」

ユウヒはニコニコ笑いながら私の腕に自分の腕を絡めた。

「今日はね、カジュアルフランスレストランよ」

「また彼氏から教えてもらったんですか?」

「うん、まぁね」

「チナツさんの彼氏はおいしいとこたくさん知ってて大人って感じです!いいなぁ。私も早くそんな大人な彼氏欲しいな」

ユウヒはそう言うと、

「うわー、きれいなワンピース!」

なんて言いながら、ショーウィンドウに顔をくっつけていた。

そういう素直で擦れてないところが好きだった。

しばらく2人で大通りを歩き、途中の路地で曲がった。

地下に続く階段を降りると、隠れ家的なカジュアルレストランがあった。

雄馬さんと何回目かのデートで連れて行ってもらった場所だ。

店内はとても薄暗いけれど、ムーディな音楽が流れていてとても落ち着く場所だった。

お料理はカジュアルだけど、素材が厳選されていてどれもおいしい。

ユウヒには少し大人っぽい場所かなと思いながらも、いつかユウヒが彼氏とデートする場所の一つとして教えてあげたかった。

「うわー。こんな地下に下がって行くの、ドキドキしちゃいます!」

ユウヒはまるでお化け屋敷にでも連れていかれたかのように、不安気な顔で私の腕をぎゅっと握った。

地下の扉を開けると、またがらっと雰囲気が変わりユウヒはようやくホッとした表情で私に笑った。

「素敵なお店。お化けでも出て来たらどうしようかと思った」

「そんなわけないじゃない」

私もそんなユウヒを見て笑った。



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