強引ドクターの蜜恋処方箋
あらかじめ予約していた席に通される。
一番隅の2人がけのテーブル。
落ち着く場所だ。
以前、雄馬さんと訪れた時もこの席だったっけ。
まだ彼の熱い眼差しに慣れなくて、緊張気味に向かい合ってた自分を思い出す。
ドリンクはワインでと思ったけど、ユウヒはまだ二十歳になったばかりでお酒の許容量が自分でもわからないと不安気だったのでジュースで乾杯した。
彩りの鮮やかな前菜が運ばれてくる。
マッシュルームのポタージュに魚料理。
そしてメインに鶏肉のトマト煮込み。
「こんなやわらかいお肉初めて!」
ユウヒはお肉を口に入れた途端、目を丸くして言った。
私もこんなお店に慣れない内は、いつでも感動してたっけ。
ユウヒを見てると、かつてのまだ未熟な自分を懐かしく思い出す。
ジュースの入ったコップをテーブルに置いた時、ユウヒが私の背中の向こうに視線を向けて目を丸くした。
「どうしたの?」
「あの人って、T大学病院に実習行った時、看護師さん達がキャーキャー行ってた先生じゃないかな」
胸が一瞬大きく震えた。
変な胸騒ぎと一緒に。
ゆっくりとユウヒの視線をたどる。
やっぱり。
雄馬さんだった。
緊張した顔で座る雄馬さんの前に、後ろ姿だったけど髪の長い女性が座っていた。
え?
これって、どういうこと?
鼓動が激しくなっていく。
見ていられない私はまた正面に座るユウヒの顔を見つめた。
「確か、松井、先生じゃなかったかな?イケメン先生ですよねぇ。遠目でもかっこいいわ」
ユウヒは小声で続けた。
「女性と一緒みたいですね。彼女だったりして。看護師さん達ショックだろうなぁ」
無邪気に言うユウヒに今は何か言葉を返す余裕はなかった。
ただ、「どうして?」が頭の中に渦巻いている。
最近、なんとなく元気がないように感じていた雄馬さんが気になってはいたけれど、何か理由があるの?
ユウヒがいなかったら、すぐにでもそばに駆け寄ってその理由を聞きたかった。
目の前の鶏肉のトマト煮込みが少しずつ冷えていくのをじっと見つめながら、フォークとナイフを持つ手は動こうとしなかった。
「チナツさん?」
ユウヒが私の顔をのぞき込んでいる。
「あ、ごめんごめん」
「どうしちゃったんですか?ひょっとしてチナツさんも松井先生のファンだったとか?チナツさんの彼氏に告げ口しちゃいますよー」
ユウヒはコロコロと楽しげに笑った。
松井先生と彼氏は同一人物だってこと、まだ看護学校の仲間は誰も知らなかった。
「さ、食べちゃおうっか。この後、カラオケでも行く?」
引きつる顔でユウヒに笑いかけた。
「カラオケ?!チナツさんカラオケなんかしちゃうんですか?」
ユウヒは意外そうな顔で私を見つめた。
自分で提案したもののカラオケなんて、ほんとご無沙汰だった。
っていうか、誰かに振られた時くらいにしか行ったことがなかった。
一番隅の2人がけのテーブル。
落ち着く場所だ。
以前、雄馬さんと訪れた時もこの席だったっけ。
まだ彼の熱い眼差しに慣れなくて、緊張気味に向かい合ってた自分を思い出す。
ドリンクはワインでと思ったけど、ユウヒはまだ二十歳になったばかりでお酒の許容量が自分でもわからないと不安気だったのでジュースで乾杯した。
彩りの鮮やかな前菜が運ばれてくる。
マッシュルームのポタージュに魚料理。
そしてメインに鶏肉のトマト煮込み。
「こんなやわらかいお肉初めて!」
ユウヒはお肉を口に入れた途端、目を丸くして言った。
私もこんなお店に慣れない内は、いつでも感動してたっけ。
ユウヒを見てると、かつてのまだ未熟な自分を懐かしく思い出す。
ジュースの入ったコップをテーブルに置いた時、ユウヒが私の背中の向こうに視線を向けて目を丸くした。
「どうしたの?」
「あの人って、T大学病院に実習行った時、看護師さん達がキャーキャー行ってた先生じゃないかな」
胸が一瞬大きく震えた。
変な胸騒ぎと一緒に。
ゆっくりとユウヒの視線をたどる。
やっぱり。
雄馬さんだった。
緊張した顔で座る雄馬さんの前に、後ろ姿だったけど髪の長い女性が座っていた。
え?
これって、どういうこと?
鼓動が激しくなっていく。
見ていられない私はまた正面に座るユウヒの顔を見つめた。
「確か、松井、先生じゃなかったかな?イケメン先生ですよねぇ。遠目でもかっこいいわ」
ユウヒは小声で続けた。
「女性と一緒みたいですね。彼女だったりして。看護師さん達ショックだろうなぁ」
無邪気に言うユウヒに今は何か言葉を返す余裕はなかった。
ただ、「どうして?」が頭の中に渦巻いている。
最近、なんとなく元気がないように感じていた雄馬さんが気になってはいたけれど、何か理由があるの?
ユウヒがいなかったら、すぐにでもそばに駆け寄ってその理由を聞きたかった。
目の前の鶏肉のトマト煮込みが少しずつ冷えていくのをじっと見つめながら、フォークとナイフを持つ手は動こうとしなかった。
「チナツさん?」
ユウヒが私の顔をのぞき込んでいる。
「あ、ごめんごめん」
「どうしちゃったんですか?ひょっとしてチナツさんも松井先生のファンだったとか?チナツさんの彼氏に告げ口しちゃいますよー」
ユウヒはコロコロと楽しげに笑った。
松井先生と彼氏は同一人物だってこと、まだ看護学校の仲間は誰も知らなかった。
「さ、食べちゃおうっか。この後、カラオケでも行く?」
引きつる顔でユウヒに笑いかけた。
「カラオケ?!チナツさんカラオケなんかしちゃうんですか?」
ユウヒは意外そうな顔で私を見つめた。
自分で提案したもののカラオケなんて、ほんとご無沙汰だった。
っていうか、誰かに振られた時くらいにしか行ったことがなかった。