準備は万端【短編】
あと数日もすれば、無精髭をはやし、青黒いクマを目の下に浮かび上がらせて、フケだらけのもさもさの髪で、ほのかにオヤジ臭をまきちらす、田舎の両親が見たらショックで心臓発作を起こしてしまいそうな、恐怖のダメ人間がこの部屋に出現することだろう。

それがいつものパターンだ。

読める。

読めすぎる。

読めてしまう自分がかなしい。


「圭、あんたもう、来年で30歳なんだよ?」

まるで母親のような口調だといやになったが、言わずにおれなかった。

ただのかわいい女でいさせてくれない圭に憎しみすらおぼえた。

しかし圭は聞こえていないのか、聞こえているのに聞こえてないふりをしているのか、攻略本をガン見して、

「うわー、なんだこのシステム、ややこしー」

なんてひとりごちている。

まるきり子どもだ。

その様子が余計にあたしを苛立たせた。


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