準備は万端【短編】
「出てって」

あたしは静かに言い放った。


もう、疲れた。



圭と一緒に暮らしはじめてもう2年になる。

いつか変わってくれるだろうと思っていたあたしがバカだった。

こうなったら一刻も早く圭と別れて、地に足のついた、大人の男を見つけなくちゃならない。

あたしももう若くない。猶予はないのだ。

周りの友だちは次々と結婚して子どもを産んでいる。

今年のはじめに、三つ下の妹も結婚した。

みんな、すごく幸せそうに見えた。

なんの疑問も持たずに結婚して、子どもを産んで、育てて。

ごくごく普通の、ごくごく平凡な、ごくごくあたりまえの幸せ。

多くは望まない。

あたしはそれが欲しい。

圭の返答を待たずに、あたしは脱衣所に飛び込んで部屋着に着替えた。

つめたい水で顔を洗って、化粧水を顔にふりつける。


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