準備は万端【短編】
窓から差し込む朝日のまぶしさに目を覚ました。

カーテンを開けっ放しにして眠ってしまったらしい。

体を起こすと、ずきんと頭に痛みが走った。

床の上に、ビールの空き缶やワインの空き瓶が転がっている。

部屋にあったアルコールを一晩でぜんぶ飲み干してしまった。

ひどく喉が渇いていて、サイドテーブルのグラスに手を伸ばし、氷が解けて薄くなったウィスキーを飲み干す。

今日からひとりの生活がはじまる。

鈍く痛む頭で、ぼんやりと考える。

いつもだったら、休日は遅くまで寝ているあたしを起こさないように、圭が朝食のしたくをしてくれるはずだった。

コーヒーとパンの焼けるにおいであたしは目を覚ます。

この二年間、何度もくりかえしてきた休日の朝。

あたしは幸せだったんじゃないだろうか。

「ほら、早く起きて。冷めちゃうよ」

甘ったるい声であたしを起こす圭の声。

まどろみの中でそれを聞くのが心地よくて、この時間が永遠に続けばいいって、思ったことはなかっただろうか。

ひとりのベッドの中で、あたしはぼんやりと泣いた。

ぼんやりとかなしくて、さびしかった。

どうしていいのか、わからなかった。

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