死なないヒト
永遠の戸籍 序章
男は部屋に帰った途端、ソファに身を投げ出した。
部屋には備え付けの家具以外、何もなかった。
たった一つの小さな窓から、光が差し込んでいた。地球とは違い、太陽の光は刺々しかった。
真空の海か…。
男はうんざりした様子で外を見た。窓からは暗闇と隣の船しか見えなかった。
男がいるのは宇宙船だった。男はもう数年、地球に帰っていない。理由は戦争だった。人類は宇宙を渡る事が出来るようになっても、相変わらず戦争をしていた。そして、今日も男は戦ってきた。
「メールを。」
男は命令した。
『珍しい。今日は1件もメールが来ている。』
この部屋の主人とは別の声が部屋に響いた。
この部屋の主人は変わっていた。部屋の管理システムの性格を、勝手にカスタムしていた。その為、この部屋のプログラムは気に触る事を平気で言った。男はそれが気に入っていた。
『読むか?』
「ああ。」
男は答えた。
久し振りに来た誰からかのメールを捨てるのはもったいない。そのメールが誰から来たものか、男には見当もつかなかった。知り合いはいつも顔を合わせているし、家族はとうの昔に戦争で死んでしまった。
男は少し期待している自分に苦笑した。
『ネイト・トラム殿
審査の結果、能力、我が国への功績によりクローン権を与える事が決定しました。我が国の守護者として活躍される事を願っております。クローン権の放棄の申請は、10日間以内にお願いします。
人口管理局局長 フィネート・A・クリムト』
部屋には備え付けの家具以外、何もなかった。
たった一つの小さな窓から、光が差し込んでいた。地球とは違い、太陽の光は刺々しかった。
真空の海か…。
男はうんざりした様子で外を見た。窓からは暗闇と隣の船しか見えなかった。
男がいるのは宇宙船だった。男はもう数年、地球に帰っていない。理由は戦争だった。人類は宇宙を渡る事が出来るようになっても、相変わらず戦争をしていた。そして、今日も男は戦ってきた。
「メールを。」
男は命令した。
『珍しい。今日は1件もメールが来ている。』
この部屋の主人とは別の声が部屋に響いた。
この部屋の主人は変わっていた。部屋の管理システムの性格を、勝手にカスタムしていた。その為、この部屋のプログラムは気に触る事を平気で言った。男はそれが気に入っていた。
『読むか?』
「ああ。」
男は答えた。
久し振りに来た誰からかのメールを捨てるのはもったいない。そのメールが誰から来たものか、男には見当もつかなかった。知り合いはいつも顔を合わせているし、家族はとうの昔に戦争で死んでしまった。
男は少し期待している自分に苦笑した。
『ネイト・トラム殿
審査の結果、能力、我が国への功績によりクローン権を与える事が決定しました。我が国の守護者として活躍される事を願っております。クローン権の放棄の申請は、10日間以内にお願いします。
人口管理局局長 フィネート・A・クリムト』