紅の葬送曲
声がした方を見れば、水と薬袋をトレイに乗せた小鳥遊さんがいた。
「小鳥遊さん……」
「浅井さん、これを凌様に持って行って貰えますか?」
「姉さん!凌は──」
「江、彼女は知りたがってる。なら、知る権利はあるはずだ」
姉に窘められ、小鳥遊君は口を閉ざしてしまった。
小鳥遊さんは弟を一瞥すると、持っていたトレイを私に差し出してきた。
「貴女は凌様の補佐官なんです。だから、あの方を支えて差し上げてください」
穏やかに笑う彼女の姿に、胸が痛んだ。
彼女は私が補佐官になるまで寿永隊長をいつも隣で支え続けていた人だ。
そんな人が私のような新人に大切な人を託すなんて辛いに決まっている。
私は彼女の言葉に頷くとトレイを受け取って、寿永隊長の部屋に向かった。