紅の葬送曲
「ん……」
目を覚ますと、目の前には見慣れた白い天井があった。
でも、視界はその天井からすぐに一人の女の顔に変わった。
「良かった、気がつきましたか?」
「お前……」
そこにいたのは昨日から俺の補佐官になった浅井紅緒だった。
浅井紅緒は目を覚ました俺の姿に安心したのか、ホッとしたような顔をする。
何でホッとする?
浅井紅緒がまだ俺に仕えてから2日しか経っていない。
俺は上司らしいことを彼女にしてやったつもりはない。
寧ろ、厳しく接している。
年齢的には彼女が一つ上だが、上司と部下の関係ではそんなものは関係ない。
挫けて俺を嫌っていてもおかしくないはずなのに、彼女は信頼する上司に向けるような眼差しを俺に向けてくる。