紅の葬送曲
Ⅰ
良く晴れ、薄紅色の花が咲き誇る4月。
「まさか、アンタが警官になるなんてねー。前のアンタからは想像出来ないわ」
紺色の制服に身を包み、意地の悪そうな顔を浮かべて隣で笑うのは小学生の頃からの腐れ縁の友人。
そんな友人を同じく紺色の制服に身を包んだ私は軽く睨み付ける。
「その言葉そっくりそのままアンタに返すわ、京。それに、私は元々警官になりたかったんだからね」
「冗談よ、冗談。ホントに紅緒は冗談が通じないんだからー」
友人──香西京(コウザイ ミヤコ)は楽しそうに笑いながら桜の咲く道を歩いていく。
この4月に私は念願の警官になった。
ずっと憧れていた職業……、お父さんが誇りを持って就いていた職業に。
お父さん、見てる?私、警官になったよ。
立ち止まって空を見上げれば、4月とは思えない程澄みきった青い空が広がっていた。
空に向かってそう呟くと、私──浅井紅緒(アザイ ベニオ)は桜が咲き誇る中を再び歩き出した。