紅の葬送曲
「お疲れ様でした。おやすみなさい、寿永隊長」
そっと俺に布団をかけ直し、彼女は部屋から出ていった。
一人になると、俺は閉じていた目を開いた。
「お人好しな女……」
別にお人好しで駄目という訳じゃない。
ただ、これまでにどれだけ自分が損をしてきたのだろうと思ってしまう。
現に彼女は新卒の警官を貶した俺に食って掛かり、なりたくもない翔鷹に入れられた。
警官を志した彼女が警官とは違う警官になるはめになってしまったのだ。
それでも翔鷹に慣れようと努力しているのが窺える。
「アンタが娘を大切に思っていた理由が何となく分かったよ、浅井さん」
俺は何年か前に殉職した彼女の父親のことを思い出した。