紅の葬送曲
Ⅰ
翌日。
再び翔鷹に出動命令が出た。
今回は殺人事件ではなく、デモ行進の監視だった。
「うわー、あの人達も飽きずにやるねー。切碕事件から20年も経ってるのにまだ続けてるんだもんね」
小鳥遊君はビルの屋上から双眼鏡を使って、下で行われているデモの様子を見ている。
下で行われているデモは切碕事件を引き起こし、国の人体実験の賜物である切碕を産み出した政府へ反発するものだった。
小鳥遊君の言うとおり20年も経っているんだから……と思うけど、デモを行っているのは切碕とその仲間に家族を殺された人達とそれに賛同する人達だ。
国が切碕を産み出したことで失った命は少なくはないからデモを起こしたくなるのは分かる。
でも……。
『人体実験で産まれた人間は同じ人として扱うべきではない!殺人者のDNAを組み込まれ、フラスコから産まれた産まれながらの殺人犯だ!』
拡声器で発せされたその言葉に、不快感が込み上げてきた。