紅の葬送曲
「……あんな風に抗議したって死んだ人は戻ってこないのにな」
彼の冷めた目に、一瞬だけ悲しみが映ったような気がした。
確かに抗議して死んだ人が戻ってきたら、悲しみや苦しみは減るだろう。
でも、戻ってこないから悲しみや苦しみが無くならない。
デモを行っている人達は少しでも悲しみや苦しみを抱える人が少なくなるようにと行っているんだと思う。
だけど、作られた人間達を否定するのはどうかと思う。
だって、彼らは好きでそんな風に産まれた訳じゃないんだから。
「人間はエゴの塊だ。だから、産み出してはいけないものを産み出してしまった。自分達が少しでも平和に生きるために」
私の思考を読んだかのように、寿永隊長は呟いた。
彼は人体実験の研究に携わっていた寿永家の生まれだ。
だから、何かしらの責任を感じているのかもしれない。