紅の葬送曲
「あ、今日は解散するみたいだよ」
すると、双眼鏡を使って下を見ていた小鳥遊君が声をあげる。
その声に、私も視線を下に向けた。
デモを行っていた人達は言いたいことを言って満足したのか、ゾロゾロと撤退していく。
「約二時間か……。今日は短かったな」
小鳥遊さんは腕時計を見ると現場に来てから今までの時間を確認して、書類に記入した。
短いと言っても緊張感はあった。
もし、デモ隊が過激化して武力を行使した場合、翔鷹がそれを抑圧しなくてはならない。
そうなれば、デモ隊との衝突は免れないし、怪我人が出ていたかもしれない。
「終わったなら帰るぞ。わざわざ俺が来る必要があったのか?」
「文句言わないでくださいよ、隊長。翔鷹本部は貴方を含めて実動部隊の人数が7人しかいないんですから」
文句を言う寿永隊長を、小鳥遊さんが苦笑いを浮かべながら宥めた。
「人手不足過ぎだな。小鳥遊警視総監に掛け合って、使えそうな奴を見繕うか」
彼は面倒臭そうに頭をかきむしると屋上から降りる階段を降りていった。