紅の葬送曲
「小鳥遊さん、何を頼んだんですか?」
「エスプレッソと季節限定のシフォンケーキです。シフォンケーキは人数分あるので、着いたら皆で食べましょう」
あの値の張るケーキを人数分とか小鳥遊さんってば太っ腹!
ケーキが食べられることに嬉しさを感じていると、前を歩いていた小鳥遊君が足を止めた。
小鳥遊さんも足を止めたものだから私も足を止める。
ふと、さっきまで感じなかった嫌な気配を前方から感じた。
「……ケーキの前に軽ーい運動でもしようか」
小鳥遊君が身を屈め、臨戦体勢を取ったその瞬間──。
彼の頬が切れ、血が伝った。
「小鳥遊君!」
「黙視できない程細く、鋭利なワイヤー……。これが噂に聞いた死の傀儡師・楊蘭の糸……」
黙視できない程のワイヤー?
それに、死の傀儡師・楊蘭って一体……。
すると、物陰から一人の女の人が出てきた。