紅の葬送曲
「美しい顔が更に美しくなったな。そなた、妾の人形にならぬか?」
女の人は花魁の格好をもう少し動きやすくしたような着物を着ていて、口調も何処かそれっぽい。
でも、常人ではないことは一目で分かった。
「止めとくよ。俺は生きているうちも死んでから操られるのはごめ──っ!?」
小鳥遊君の言葉が途中で途切れたと思えば、彼の体は力が抜けたように地面に倒れた。
「小鳥遊君!」
「江!」
倒れた小鳥遊君に駆け寄ろうとしたら、彼の体は引っ張られるようにして楊蘭の元に行く。
鋭利なワイヤーで引っ張られたせいか、小鳥遊君の手足は切れて血が出ていた。
「そなたが否定しても妾は関係ない。妾の糸があれば、操れぬものなどないのじゃ」
楊蘭は痛みで顔をしかめる小鳥遊君の頬の傷をなぞると、血のついた手を舐めた。