紅の葬送曲
Ⅲ
翔鷹本部に戻ると、私は寿永隊長達に何も言わずにそのまま自室に戻った。
自分の身の上を知ってしまった以上、彼らに合わせる顔がない。
退職届を出して、姿を消そう。
それが叶わないなら、せめて寿永隊長に殺されたい。
彼なら私を殺してくれる。
無気力にベッドに寝転がり、ただ天井を見つめる。
目を閉じれば、忘れてしまっていたことが思い出せさせられる。
でも、おかしい。
忘れていた記憶を思い出したのに、幼い頃の記憶に一緒に生きていた紅斗が出てこない。
双子なら一緒に育ってるはずなのに……。
「もう訳分かんない……」
しんとした空間に、私の声だけが虚しく溶けていく。
声みたいに私も溶けてしまえば良いのに……。