紅の葬送曲


「おい、何勝手に部屋に戻ってる?」




ふと、寿永隊長の声がした。





驚いて体を起こすと、目の前には腕を組んで壁に寄りかかる彼がいた。





「何で鍵はかけたはずなのに……」




「阿呆、俺を誰だと思っている?カードキーなんて無くても入れる」




言葉の意味が一瞬分からなかったけど、彼の地位を思い出して理解した。





翔鷹の設備を管理しているのは三名家だ。





三名家の寿永の生まれである彼が言えば、セキュリティ会社にカードキーが無くとも鍵を開けてもらえるだろう。




どうせ、そのセキュリティ会社も三名家の蓬條が経営する会社だろうし……。






「さて、怪我した仲間を放って、上司である俺に何も言わずに部屋に戻るとはどういうことなのか説明してもらおう」





寿永隊長は壁から体を起こすと、ベッドにいる私に近付いてきた。




でも、私は視線をそらし、口を固く結んだ。




言わなくても分かってるくせに……。





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