紅の葬送曲
これで寿永隊長の重荷も軽くなって、私も楽になれる。
そう思っていたのに──。
「……死にたいと願ってる奴が泣くなよ」
首に回されていた指が頬を撫でた。
撫でた指先は濡れている。
私は意味が分からなくて頬を触ると、濡れていた。
濡れていたことで自分が泣いていたことに気が付いた。
「何で私は泣いてるの……?死にたいはずなのに、何で……」
溢れてくる涙を拭いながら唇を噛み締める。
「それはお前が心の中で生きたいと思っているからだ。どんなに口で言っていようが、涙がその証拠だ」
寿永隊長は私の上から退けると、私の腕を掴んで体を起こされる。
そして、私に一通の手紙を差し出してきた。
宛名は寿永周……寿永隊長のお父さんになっていて、その手書きの文字には見覚えがあった。
「これって……」
「生前、お前の養父……浅井さんが父さんに送った手紙だ。……が、中身を見れば分かる」
私に渡したということは自分で確かめろと言う意味なのだろう。
私は中から手紙を出して、目を通した。