紅の葬送曲


「え……」




普通なら寿永隊長のお父さんの名前がある場所に、何故か私の名前があった。





書いている文脈も敬うべき相手へのものではなく、親しい……家族へと向けるようなものだった。




「これってどういう……」





宛名は彼のお父さんなのに、中身の手紙の宛名は私になっている。





つまり、それは彼のお父さんではなく、私宛の手紙と言うことになる。





「悪いと思ったが、中身をさせてもらった。封筒の宛名が父さんの名前になっているが、それはカモフラージュだ」




「カモフラージュ?」





「……読めば分かる」




寿永隊長はそう言って、ベッドの端に座った。




私は言われるがまま手紙を再び読み始める。





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