紅の葬送曲
「妹には笑ってて欲しいけど、上手く行かないな……」
赤い目の彼の脳裏に浮かぶのは返り血を浴びた自分と妹。
そして、血溜まりに倒れる寿永の当主とその彼を刺した男……。
彼らはその男から一人の女の子を守ろうとしている。
男のせいで生き別れてしまった赤い目の彼の妹。
やっと出逢えたのに彼女は自分を忘れ、敵対心を抱いている。
最愛の妹にそんな目を向けられるのは辛いことだが、彼女が笑っていられるなら赤い目の彼にとって幸せなことだった。
「紅斗」
「ん?」
「もう少しだから我慢してくれ。もう少しで紅緒と暮らせるから」
自分以上に辛そうにしているもう一人の青年に、赤い目の彼──紅斗は穏やかに笑った。
「分かってるよ、琉介……」
紅斗はそう彼に笑いかけて、闇の中に消えていった。