紅の葬送曲
でも、彼は私を見るだけで何も言わない。
え、何で何も言わないの!?
むしろ、そっちの方が怖いんですけど!?
「あの、寿永──」
「お前、今から暇か?」
すると、寿永隊長はふいに口を開いた。
「え?」
「お前の友人は今から江とあの男を署に連行して、お前と遊んでる場合じゃなくなる。……暇だよな?」
──ぞわり。
彼の言葉に何でか分からないけど寒気がした。
何か頷いちゃいけない気がする。
でも、頷かないといけない気もする。
「……暇だよな?」
念を押すような、脅迫のような彼の言い方に私は頷くしかなかった。
私の頷きに、彼が黒い笑みを浮かべた。
──嫌な予感。