紅の葬送曲


「お前をあの人には会わせたくないんだが……。会わせないと、周りに圧力をかけそうでな……」





彼が心底嫌そうな顔をしているところを見ると、彼自身も会いたくないのだろう。




そんな人と私も出来れば会いたくない。




何せ、自分の子に家のために死ねという人だ。





どんな人か見てみたいと思う一方、会いたくないとも思う。





「あの人は切碕を恨んでる。だから、お前ことはあの人には隠してたんだ。まったく、何処から聞き付けたのやら……」





私の実父である切碕を恨んでるのは分かる気がする。





自分の夫や息子を呪い、死に追いやってしまった切碕。





恨まない方が変だ。





すると、寿永隊長は掴んでいる私の手をきゅっと握った。





「良いか、俺の傍から離れるな。……離れたら守るものも守れないからな」




「へ?」




「あの人が何て言おうとお前は俺の補佐官だ。だから、お前を守るのも俺の役目だ」




ずっと怖い顔をしていた寿永隊長だったけど、そう言ったときの声は優しく、顔も穏やかだった。





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