紅の葬送曲


すると、階段の前に一人の男の子がいるのを見つけた。




彼は寿永隊長に良く似た雰囲気をしている。





「兄さん、お帰りなさい」




寿永隊長を兄さんということは弟さんである汀様?





寿永隊長は近付いてくる汀様に、穏やかな笑顔を浮かべた。





「ただいま、汀」





いつも近寄りがたい雰囲気を出している寿永隊長も、弟さんの前では穏やかだ。




兄弟っていいなぁ……。





小鳥遊姉弟もだけど、お互いにお互いを大切に思っているのが感じられる。





私は最近双子の兄がいると分かったけど、こんな風になれるとは思えない。





すると、汀様と目が合った。





「貴女が浅井紅緒さんですね?初めまして、寿永凌の弟の汀です」




頭を下げてきた汀様に私も慌てて頭を下げた。





でも、汀様の目にも何処か違和感を感じた。





「浅井紅緒と申します。お世話になっているのは私の方で──」




「……よく汚れたその血で寿永の家に来られましたね」




汀様の冷たい声と笑顔に、私は息を飲んだ。





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